宮崎県西都市を中心に活動している宮崎合気道会グループ「合気道元徳会」道場長による武道コラム - サムライハートSamurai Heart。私達は、合気道の素晴らしさを一人でも多くの人に伝えたいと考えています。興味のある方は、ぜひ一度見学にお越しください。詳細は、合気道元徳会のホームページをご覧ください。

2020年4月25日土曜日

合気道と悟り(姿勢、丹田、瞑想、空の世界)④

 以外にも反響が大きく、たくさん質問が届いていますので、参考までにいくつかの質問に回答いたします。



 まず初めに「空の世界について、もう少し簡単に教えていただきたい」とのご質問ですが、


 空の世界とは、般若心経でいうところの空の世界のことで、一般的には三昧の境地、ヨガの世界では、サマーディとも呼ばれています。ちなみにこのサマーディという言葉が、インドの言葉から漢語になり、日本に伝わり三昧と表現されるようになったようです。


 現在の言葉で説明すると潜在意識の底の底、いわゆる奥底にある世界で、叡智とエネルギーの集合体と呼べる世界です。


 この世界に至った人の受け取り方で解釈は異なりますが、仏教では涅槃、神道では黄泉の国、道教では天、キリスト教では神の国、インド哲学ではブラフマン、そして、中村天風先生は宇宙霊と呼びます。


 また、この癒しにあふれたエネルギーのことを、合気道開祖植芝盛平先生は「愛」、イエスキリストは「癒しの力」、老子は「道」と呼びます。いわゆる根源的エネルギーのことですが、人体における生命エネルギー、そして魂(真我)と同質のものです。





 次に「悟りとはいったい何ですか」とのご質問ですが、


 自分を霊的な場所(空の世界)にいったん置くことで、自分(真我)の本質とは何かを掴むことだと思います。結果的にこの世の本質・目的等々が瞬時に理解できることで。人生上におけるすべてのことに応用可能なので、世事全般に考察・推測が可能になります。

 なお、このようなことは知識の上ではすぐに理解できることです。宗教や哲学を齧ったことがある方には常識だと思います。しかし、『実感』できないとダメ、そこに天と地の差がある、そういう感じです。



 次に「瞑想や禅はなんのために行うのですか」とのご質問ですが、


 様々な考えがあるとは思いますが、心が霊的な境地(空の世界)に入ると宇宙の根本主体(神)のエネルギーと人間の生命エネルギーが同質なので一体化する。この瞬間、宇宙の根本主体(神)の万能の英知が人間の心に受け入れられることになる。その結果、安心立命の心境が得られ悠々自適な生涯を送ることができる、こういうことだと思います。



 次に、「心身の状況の変化」についてのご質問のうち、まずは身体についてお答えしますが、


① 頭頂部がスースーする感じで常に空気が出入りしているような感じがするようになった。

② 以前は、ストレスが溜まると血圧が上がったような感じがしていたがなくなった。

③ 小周転のラインをブレイクダンスのように動かせる(うねらせる)ようになった。

④ヨガのナウリ(内臓をうねらせること)ができる。当然、腹踊り(笑)も。




 次に「心的状況の変化」について、

問題や課題について、絶妙のタイミングで回答が浮かぶようになった。

②煩悶がまったくなくなり、悠々とした心持で生活を楽しむことができている。

➂とりあえずの人生の目標を達した気がして変なあせりがなくなった。また、今後は余生?という気もしていて、何か社会貢献に努めたいと考えるようになった。


➃心根が正しくなったというか、邪心が無くなった気がする。

➄どんな人もそれなりに良い点があることを認めることが出来るようになった。


以前より随分と心が広くなった気がする。




 では、「どのように空の世界に至ったのか。ヒントをいただきたい」とのご質問ですが、今までの人生のうち、このことに影響を及ぼしたのではないかと思うものをとりあえず列記してみます。


 振り返ってみると、21歳のころに一度だけ、その世界に入ったことがあります。その後、そのことをずーっと忘れていて、改めて昨年思い出した次第です。



 また、私の場合は、空海の「光が飛び込んできた」とか、植芝先生の神秘体験のような経験はありません。徐々に、徐々に心境が進んできて、はっきりと確信できたのが昨年、というところ。



【参考】
 参考までに植芝盛平先生の体験について記載します。


 大正14年(1925年)、植芝盛平先生は京都府の綾部で修行を行っていました。

 ある剣道家の挑戦を受けることになり降参させました。その後、井戸端で水を浴びていたところ、突然大地が鳴動し「黄金の光」に包まれる感覚に襲われたそうです。

 この時に、宇宙との一体感を得たことで、宇宙の原理、自然の法則から小鳥や虫の鳴き声の意味までも理解することができたそうで、同時に武道の極意、精神的な悟りを得たとのことです。


「わしは直後、はッと悟り得たように思う。勝とうとして、気を張っては何も視えんのじゃ。愛をもってすべてをつつみ、気をもってすべてを流れるにまかすとき、はじめて自他一体の気・心・体の動きの世界が展開し、より悟りえた者がおのずから、いわゆる勝ちをおさめている。勝たずして勝つ――正(まさ)しく勝ち、吾(われ)に勝ち、しかもそれは一瞬の機のうちに速やかに勝ち、つまりは自他一体、神人一如、宇宙即(すなわち)我なる愛の産霊(むすび)そのものの勝利となる。すなわち、己れ一個の勝ち負けははるかに超越した、武産(たけむす)の神の絶対の勝ちがそれであり、武の道とはそこに到達することをもって至上とする。……まあそのようなことを感得したのではなかろうかな」
(注)以上は、「合気道開祖 植芝盛平伝」(出版芸術社)からの引用です。





 振り返れば、小学生の頃、野球少年だったのですが、人材不足から水泳大会にも出なければならず、毎日両方を練習していました。しかし、私の欠点でスタミナがなく、常に疲れていた状態‥。その頃読んだ小学生用のヨガの本(確か豆たぬきの本というシリーズ)で、疲れがとれる「死骸のポーズ」を必死に独習しました。


 それから、大学生の頃は苦学生でしたので、学業と仕事(深夜までの勤務)を両立させるために、この「死骸のポーズ」を必死にやりました。すると睡眠時間が短時間でも生活ができるようになり、私にとっては、不可欠なツールとして現在まで行ってきています。なお、21歳頃に一度空の世界に入ったことがあるといったのも、この頃のことです。


 その後、社会人になり、疲れた時、寝る時間があまりない時は、睡眠前に行ってきました。私の場合は、癖になっていたというほうが正解のようです。この頃から、経験上、肥田式強健術の腹胸式呼吸法を2~3回やってから、この死骸のポーズに入るとさらに効果的だと分かり、併用して行ってきました。目覚めがいいですね。全然違います。


 最近気づいたのですがこのように、ヨガの世界では奥義であり、一番難しいと言われているシャバアーサナ(死骸のポーズ)を知らず知らずに人生の糧にしていて、結果的に40数年間独習してきたようです。これがよかったのかは分かりません。しかし、何らかの影響があったのは間違いないようです。


 また、合気道家のMさんから20代の頃に立禅を学び、少しずつですが続けてまいりました。ただ、100%毎日やったか?というと、まったくそのようなことはなく、思い出した時にやる感じで、熱中してやる時期もあれば、しばらく忘れていて、思い出したように始めるというのが正直なところです。


 しかし、10年前に道場を建設した時から、稽古場所の確保ができたこともあり、実施率?は高まったように思います。また、20代の頃には分からなかった「気持ちよさ」「爽快感」「活力が増す感覚」を覚えるようになり、だんだんとやめられなくなったというのが本当のところす。


 実は以前から、座禅や座っての瞑想にも取り組んでいたのですが、始めたころは、気持ちよさをあまり感じることができないことから、立禅を主として行ってきました。


 立禅が深まり、立った状態で「深い深い静けさ」を感じることができるようになった頃から、ようやく座っても同じように「深い深い静けさ」を感じることができるようになりました。


 座禅(座っての瞑想)、立禅どちらがいいかと問われれば、もちろん人それぞれなのでしょうが、現在は、座禅のほうがより深い世界に入れる気がしています。


 座禅(座っての瞑想)、立禅、死骸のポーズ(臥禅?)、いずれも最終の目的は同じだと思いますが、それぞれ欠点があります。その人が楽なポーズが一番です。


 座禅(座っての瞑想)は、足が短い日本人にとって、重心が安定しにくいという欠点があります。重心が安定しないと身体を脱力することが叶わないことから仮死状態に至らないため、深い静けさを味わうことがかないにくいです。また日本人(特に合気道家)には正座(金剛座)だと重心が安定しやすいのですが、足がしびれやすく長時間座れないという欠点もあります。


 立禅は、丹田が理解できた方には深い静けさの世界に入りやすいのですが、丹田が理解できない方は、やはり重心が安定しにくく、また、人によっては「立ったまま瞑想できるわけがない! 倒れるやないか(笑)」という思いが強い方が意外に多いようです。意識の転換が必要ですね。


 死骸のポーズは一番簡単ですが、眠ってしまいやすい(笑)という悲しい欠点があります。



 現在は、座っての瞑想、立っての瞑想、死骸のポーズをその日の気分で行っていますが、その深い深い静けさのまま合気道の稽古を行うよう努めています。



 以上、参考になるかは分かりませんが、ご質問の回答になります。



「合気道と悟り(姿勢、丹田、瞑想、空の世界)➄完」につづく
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合気道と悟り(姿勢、丹田、瞑想、空の世界)③

 さて、ここからが本番(笑)です。


 今回は、見性悟道、いわゆる無念無想の境地についてお話しします。


 見性悟道は、合気道や武道などを趣味程度ではなく、「道」として学んでいる方々にとっての最終目標(目的)ではないでしょうか。


 さて、現在の私は、一通り稽古してから、若しくは稽古の前に座禅、立禅、正座法等々、何でもいいのですが、とにかく瞑想を行っています。


 現在は、基本的に天風会の安定打座密法と立禅をやっていますが、その時の姿勢は、座禅、立禅、椅子、寝てなど、正直なところ、気分に任せて適当です(笑)。あまりこだわりません。空の世界に入った瞬間は、身体は息をするのも忘れている仮死状態になりますので、その時に体勢が崩れないことが大前提です。まずは、一瞬眠っても瞑想状態に影響を与えない程度の幾何学的に強く正しい姿勢が求められます。これがないと心身脱落の境地には入れません。


 瞑想の前には事前準備として姿勢を整え丹田をつくっておくとよいです。丹田を整えておくというのがよい表現かもしれません。これは、早く深い静かな世界に入るための下準備になりますが、理由として、一つは安定した姿勢をつくるため、もう一つは、思考回路を遮断するためです。丹田をしっかり極めると、その瞬間思考回路がストップし、何も考えていない(考えられない)状態になりますので、そのまま深い瞑想状態に入ることができます。


 そうするうちにモヤモヤした白い煙のようなものが下から上がってきて、ストレスを洗い流してくれるような感覚が生じます。この時の感覚は、「すごくいい気分♪」という感じなのですが、聞いた話によると、この状態が「中国の洗髄経に書いてある洗髄状態だよ」という方もいます。


 曹洞宗開祖の道元禅師は、座禅のことを「いわゆる坐禅とは習禅にはあらず。唯これ『安楽の法門』なり」と表現されており、いわゆる坐禅とは、難行苦行ではなく安楽の行であり『安楽の法門』であると難行苦行を否定されています。


 安楽とは、「心身の苦痛や生活の苦労がなく、楽々としていること」なので、実は座禅とは元々は、「心も体も楽にしてくれる方法」だったのです。


 分かりやすく言うと「満足感」や「幸福感」等々、何でもよいのですが要は「気持のよさ」が羅針盤だと思います。禅とは本来、忍耐心、我慢等々とは対極にある存在だったようです。


 さて、次に思考回路がストップした状況から、意識モードが数段階に分けて切り替わっていきます。


 時には、身体の腕や手の中を、まるでホースの中を水が通って活性化していくような感覚が生じたり、何かが身体の中を貫通していく感じがすることがあります。また、手の指がぶくぶくと膨れ上がる感覚を得ることも度々起こります。この後は、物理的に凄く力が出ますね。不思議です。きっと、このようにまだまだ私達の知らない、知られていないことがたくさんあるのでしょうね。


【参考】
 「立禅は初めは5分、あるいは10分と短い時間しか持たないが、訓練を続けることにより、30分、1時間と立てるようになる。30分、1時間と立てるようになれば、自然のうちに無我の境地に入ることができる。この無我の境地に入っていくには、さほどそれを意識しなくても長い時間たっていると自然にできるようになるものである。」

 「(禅の最中について、太気至誠拳法創始者の澤井健一先生が言うには)『今夜の食事のこと、何か気に掛かること、何でも考えたものがあれば考えてもいいよ。足が痛くなれば、もうそれどころではないよ。頭の中がそのことで一杯になってくる。それを超えれば、もうそこには何も無い。』実際、立禅を行ってみたが、まったくその通りであった」

 「この苦しみを長年続けていると、一つの形ができ、体内に『気』が充満してくるのが分かるようになる。私が立禅を組み始めてちょうど5年くらいたってからのことである。電気でいう充電と同じように、体内に自然と『気』が充満してきたのを覚えている」
太気至誠拳法 佐藤嘉道


【参考】
「合気道がなぜ素晴らしいか。それは全ての力を抜くことを知ったからである。自分の体力的欲望をすっかり捨てたところに、無限の力が流れてくることが分かったからである」
万誠館合気道創始者 砂泊誠秀氏の言葉



 次に意識モードが深く静かな世界に切り替わっていく度に、この幸福感、満足感に包まれた状態を維持したい、止めたくない‥という感覚が強く生じます。


 そして、もう一段階意識モードが切り替わり、コクッ(という感じで)と「‥‥‥(意識ははっきりしているが、何も考えていない世界)」に突入します。


 この深く静かな、とっても深く静かなシーンとした世界‥、これが「空」という世界の正体で、この宇宙の実相とも言えます。



【参考】
「音のない、シーンとした静かな世界が宇宙の新実相で、そこには宇宙本体のエネルギーが遍満存在している」
中村天風先生の言葉


 いわゆるサマーディ、三昧と言われる境地です。合気道では、いわゆる「澄み切りの境地」というところでしょう。


 まだうまく説明できないのですが、意識はあるがまったく感情のない全てが客観的に見える(思える)世界、若しくはプラスマイナスのない世界と表現してもよい気がします。


 なお、この世界に入るのは実はまったく難しくないのですが、ただし、難しいと思っている人にはたしかに難しいかもしれないな、とも思えます。表現は難しいのですが、何年も厳しい修行をし、忍耐のうえに忍耐を重ねてからでないと行きつけない…、そう思っている人には難しいという意味です。


 以外に思えるかもしれませんが、すべての人がその世界に入ったことがあるはずです。実は、誰もが入ったことがある世界が、その世界なのだと認識できていないだけだと思います。その世界がどのような状態なのか理解していないからしょうがありませんが…。


 また、あまり知られていないことですが、瞑想なり座禅は、線香が燃え尽きる時間(約45分)行うとか言われていますので、その時間中(45分間)ずっとこの空の世界に入っているのではないかと思われがちですが、それは誤解です。空の世界に入れる時間は、普通は数秒から数十秒、長い方で1~2分というところでしょうか。例えば45分間瞑想を行うとすれば、空の世界に入る数秒から1~2分間が45分中に何回か繰り返すというのが本当のところです。なお、これは私だけの意見ではなく、その道に達したか方の共通認識です。念のため。


【参考】
「実我の境地は、一刹那である」

「本当にシーンとした気持ちが続くのは、私の場合でも1~2分だね」
 中村天風先生の言葉


 実際、この世界に入っている瞬間は、身体が仮死状態になることで意識(魂)だけがクリアに活動している状態で、息をすることさえ忘れています。正直、この世界に1分入れる人はまれだと思います。普通は数秒ではないでしょうか。私の場合もだんだんと長くなってきてはいますが、数分というのはまだありません。


 ただ、生命エネルギーは一瞬にして注ぎ込まれますので、実際は数秒間の数回の繰り返しで充分にエネルギーが充電されますので、それでも十二分に十分だと言えます。


 ここでようやく自分の正体が、身体でも、心でもない、「魂(気の集合体)」なのだと理解することができます。このことを理解していた合気道開祖植芝盛平先生は、「合気道は、霊主体従の武道である」と大本教の言葉を借りて説明されたのだと思います。



【参考】
「肉体は自己そのものではなく、自己の命が所有しているものである。それは、ちょうど着ている服が自分の肉体ではないのと同じである」

「我の本質を自覚するための第一過程は、「自己」と「自己の肉体」の関係と、「自己」と「自己の心」の関係を正しく認識することである」
中村天風先生の言葉



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2020年4月19日日曜日

合気道と悟り(姿勢、丹田、瞑想、空の世界)②

  さて、十年ぐらい前のことでしょうか?
 

 読んだ本のなかで、武道・格闘技会では著名な編集長が書いたコラムがありましたが、その中に昔の武道家が座禅を組んだ理由として「養生のため」というものがありました。


 その時点では、私の中では…何か腑に落ちない? という印象を持ちました。


 そのときの私の考えでは、合気道でいうところの「澄み切りの境地」や「明鏡止水の境地」を目指すのに有効であるがためだけに座禅を組むのだと思って(一部勘違い?)いたからです。


 この疑問から、私も正式に学んでみようと機会をみつけては教えていただきながら必死に座りました。


 しかし、座禅(結跏趺坐)をやるには足が短すぎるのか?(笑) 姿勢に狂いが生じたようで腰・背中に違和感が生じてきました。


 「座り方が足りないのだ!」という指導の下、私も「きっとそのとおりだろう」と感じて努力してはみたのですが…、努力の甲斐なく腰や背中の不調に悩まされ続けました。一番困ったのは実は胃の痛み‥。どうも意を圧迫し続けたようで胃酸過多になってしまったようです。 


 その後、合気道関係者のMさんに学んだ立禅を中心に続けてきましたが、腰や背中、そして胃の不調が改善され気持ちよく立つことができました。効果も倍増している気がします。


 やはり、無理する姿勢はよくない‥、無理な姿勢では自然体になれない、そう思います。


 結局のところ、禅や瞑想には、重心の安定が不可欠です。重心が一転に集中しないとリラックスすることが叶わず、自然体に至れないからです。


 なお、重心が一点に集中する場所が、いわゆる丹田です。この自覚が重要です。


 それはさておき、先ほどの腑に落ちなかった座禅を組む理由について、私の場合も現在はエネルギー充電? のためでしょうね(笑) 結局のところ同じでした。


 なお、曹洞宗開祖の道元禅氏師は、難行苦行を伴った座禅、また座禅により精神統一を高めようとしたり、無念無想を目指そうとする座禅を否定しています。それらは、結果的に得られるものであり、五感により巡り来る一念一念にとらわれず、跡をとどめない、こだわりを離れ、ただ座禅することにより、「安楽に遊戯することである」と説かれています。結局のところ、これでよいのでしょう(笑) 参考までに…。


 それでは、なぜこんなことを続けているのか?  続けられるのか?


 それは「気持ちが良くてたまらなくなるから」です。止められないのも原因の一つです。‥やめられません。それは一番幸福な時間だと感じるので心身が求めるのです。



【参考】
 「瞑想をすると夜の睡眠ではとれない精神的な疲労が癒されるので、私は瞑想をやらずにおれない」
 道元禅師の研究で有名な東京大学玉城康四郎教授の言葉



 ‥ということから、現在の禅の感想は? というと結果的に「養生のため」(笑)になっていますので、編集長の意見も当たっているような気がする今日この頃です。


 年齢が五十に近づいていることが主な原因だと思いますが、仕事のストレス、深夜勤務、飲み会等のおつきあいが引き続くと気力が減退し、「やる気がなくなり、後ろ向きな性格」になりかける…ことがあります。


 …が、立禅を“正確に行う”と「一つひとつの細胞が充電」している感じがして、「矢でも鉄砲でも何でもこい、やってやろうじゃねーか!」と、なぜかべらんめぇ口調(笑)になることも…。


 私個人の感想としては、体感、そして経験から「間違いなく充電している」と感じていますし、実際に考え方も前向きになります。


 そして大事なのは、続けただけ「真の幸福感に包まれること」が多くなることです。


 「あぁ満足‥、これ以上何もいらない‥」、そんな心境になります。


 ホントに「人生は心一つの置き所」(中村天風)…。 不思議なものです。


 禅を始めた若い時分には、まったく効果を感じませんでした。これは、禅を組み始めた当初は持って生まれた先天の気が充実しており、少しの充電では効果を感じることができなかったのだと思います。


 現在の状況は、禅を組んでから数分で体がポカポカしてきて気持ちが良くなり、止めたくなくなります。日により感じ方に多少の違いはありますが、「気持ちよくてたまらない」という表現が適当ではないでしょうか。


 また、時間がないときは、この状態のまま現実世界に引き戻されることになりますが、終了後は、握力が「ギュギュギュー」と入る感じになり、「気合が入る」という本当の意味は、このようなことを言うのかな? とも思ったりします。


 実際に握力計の針も通常以上に上がります。握力の限界からもう一握りできるような感じです。2速目のギヤに入った感じとも表現できます。



【参考】
  「空の世界には、驚くべき甦りの力が、あふれるほど、湛えられている」
 中村天風先生の言葉



 結局のところ、これは正しい姿勢と時間に比例するように思えます。


 以前の立禅の時間は、時間がないときは30分ぐらい、あるときで1時間ぐらいでしょうか。


 30分ぐらいでは、やり足りない感じが大で、残念な思いで終了していました。


 時間のあるときは、なぜか45分ぐらいから身体と空気の境目がなくなり始め、モヤモヤしたものが下から上がってきて、自然に脳が何も考えられない状態になっていました。


 その時の感覚としては、気持ちの良さだけが維持されます。


 はっきりと意識はあるのですが、時間の感覚が狂うのか…、気がつくと1時間程度経過しているときもありました。


 現在の私の考えでは、「何も考えない」という禅の教えは「姿勢の正しさ」と「リラックス」と「時間」に比例して結果的に生じるもので、「何も考えないという努力の結果ではなく」、「何も考えられなくなる」が正しい気がしています。


 そして、細胞の振動数の減少の度合いに比例して「細胞が充電する」のではないかと考えています。


 結局のところ、充電しているかのバロメーターは、「気持ちのよさ」だと思っています。


 ‥ここまではよくある話。


 ある程度の修行を積んだ方は全て理解できる内容だと思います。


 次は、瞑想、そして空の世界について書いてみます。



「合気道と悟り(姿勢、丹田、瞑想、空の世界)③」につづく
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2020年4月18日土曜日

合気道と悟り(姿勢、丹田、瞑想、空の世界)①

 合気道の魅力の一つに開祖植芝盛平先生の様々な逸話と共に伝えられる精神的境地の高さがあります。いわゆる開祖に悟った人物がいるという魅力。 


ただ肉体的に強いだけでは物足りない、精神的境地の高さも求めたい方々にとっては、とてもありがたい武道ですね。やはり、道と名の付くものの最終目標は見性悟道です。


 そこで今回は、合気道家の目指すべき方向性について書いてみます。


 その方向性とは、武道としての「合気道の理」についてで、内容は、「姿勢」と「丹田」、そして「瞑想」、その延長線上にある「空の世界」についてです。


 さて、私は、合気道が上達したいがために、様々な稽古を重ねてきましたが、ある時、合気道で特に重要なのは「姿勢」だと気づきました。その後、この姿勢を極めようとしていくうちに「丹田」に行き着き、その丹田を重視した姿勢の維持を心がけていたところ、それが結果的に瞑想の極意ということだったのか、結果的に空の世界に入ることが出来るようになりましたが、このことについて、私の体験も含めて書いてみたいと思います。


 随分前に、「構え」と題し、参考までに「姿勢」についての稽古法を書いたことがありましたが、この稽古法を一言でいうと、姿勢をきちんと整えて、「この姿勢を一生崩さない」稽古なのですが、この稽古でどのような効果が生じるのかを書いてみたいと思います。


 あくまで私の経験上でお話しますが、体質的に変化し、新陳代謝がよくなるようで異常な汗っかきになります。


 立ち読みしている時にも体が熱くなって汗が噴き出すようになり、また、自然にいつの間にか体が揺れていて笑われることもありました。


 また、丹田の意味がよく理解できるようになり、運動がお腹中心(人によっては腰中心)になります。


 さらには、20代の頃のほんの一時期でしたが、お腹、特に下っ腹がカチカチになり、わざと水月を殴ってもらっても全く平気な時期がありました。これは何だったのでしょうか?


  今でも不思議に多いますが、この期間は、元気が旺盛すぎてたいへんだった時期だった記憶があります。参考までに‥。


 それはさておき、食欲旺盛になり、かつ酒が強くなります。そして、とっても余計な効果なのですが、お腹が多少でてきます…。


 すると結果的に剣道で言うところの「へそが上を向く」状態が生じ、はっきりと丹田を自覚することが出来ました。


 結局のところ丹田とは、上半身の重みが物理的に一点に集まる場所なのだと理解することが出来ます。このことから、上半身の力みがとれないうちは、丹田の自覚は生じませんので、丹田の自覚を得るには、ひたすら上半身をリラックスさせ、力みが全くない状態で立つ、若しくは座ることで理解することが出来ます。


 合気道で力を抜く理由の一つが丹田の自覚を得るためだと思います。


 次に、ここのところを通り過ぎると、突然、「腰が強くなった」や「体が重くなった」と言われだします。体重が増えたのも原因かもしれませんが…(笑) そうしているうちに、「練習相手が突然軽くなった」気がして、合気道における呼吸投げが急に上達します。また、勝手に人が倒れたりする状況が生じ不思議な思いがします。


 ようやくここで重心が整い心身が統一している状況が人間の能力が一番発揮できる状況なのだと理解できます。全ては、重心が整い、動きが伴っても崩れが生じないことによる効果です。


 「構え」の稽古として最上のものは、姿勢をきちんと整えて、「この姿勢を一生崩さない」稽古だと思います。内容は簡単ですが、実行するには、これほど難しい稽古はないと思います。良い癖として身につければ言うことなしですね。もちろん、私も現在進行形で修行中です。


 姿勢を最重要視していた肥田式強健術の創始者である肥田春充氏は、「姿勢さえ正しければ一事が万事の如く、人間が本来有する一切の偉大な能力が自然と発生する」との言葉を残しています。実際に、1日1分程度の姿勢強化運動で、過去誰にも成し得なかった試し割りを実現しています。姿勢というものは、思っている以上に重要なのでしょう。


 なお、肥田式強健術では、正しい姿勢の状態のことを「腰腹同量」という言葉で表現しています。丹田が理解できる方は、ピンときて「なるほど」と思える表現ですが、この腰腹同量の力とは、呼吸をすると腹・腰・横腹が同時に膨らむ体勢のことです。姿勢をつくるのではなく、上半身の力を抜くと丹田に力が集中し、自然とそうなります。


 また、中村天風先生は、このことを「クンバハカ密法」や単に「クンバハカの姿勢(聖なる体勢)」と呼んでいます。


 ちなみにクンバハカのやり方は、


  ①まず肛門を閉める、
  ②同時に肩の力を抜き、肩を下げ、
  ➂へその下三寸(丹田)あたりに力を充実させる。
 

 …なのですが、これでは理解しにくい。


 このため、中村天風先生がインドのカリアッパ師から学んだ口伝(ヒント)を紹介します。


 「クンバハカとは、水をいっぱい入れたボトルに圧力が均等にかかる状態にからだをもっていくことだ…」


 表現は違えど、腰腹同量の力と同じことを言っているのだと思います。


 「姿勢の理」、そして「構えの理」というものがあるとすれば、この「腰腹同量の姿勢」、若しくは「クンバハカの姿勢」、これをベースにそれぞれの身体に応じて工夫すべきだと考えます。


 なお、経験則としてお伝えしますが、この肥田式強健術で詳細に説明してある姿勢はまねしないほうが無難です。それは、独学では腰骨・内臓等に問題が生じる場合があることと、人それぞれ骨格が違うため、目的が自然体への回帰なのに、逆に不自然な方向に行ってしまう可能性があるからです。肥田式の姿勢に何となく違和感、そして不自然さを感じるのは私だけではないでしょう?

<参考>
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%82%A5%E7%94%B0%E6%98%A5%E5%85%85




「合気道と悟り(姿勢、丹田、瞑想、空の世界)②」につづく
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