宮崎県西都市を中心に活動している宮崎合気道会グループ「合気道元徳会」道場長による武道コラム - サムライハートSamurai Heart。私達は、合気道の素晴らしさを一人でも多くの人に伝えたいと考えています。興味のある方は、ぜひ一度見学にお越しください。詳細は、合気道元徳会のホームページをご覧ください。

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2019年3月30日土曜日

Out of the World 武道は世界を駆けめぐる(岡本洋子師範著)

 世界的な合気道家である合気道京都代表の岡本洋子師範の書籍「Out of the World 武道は世界を駆けめぐる」が発売されました。





 岡本先生とは特に面識はありませんでしたが、数年前の全日本合気道演武大会でたまたま席が近くになったことがありました。その時に「小説の剣客商売の佐々木美冬さんが現実にいたら、きっとこんな風貌では…」と思い、また、「外国人が想像で心に描くサムライ的な女性(笑)の第一人者」という感じでとても印象深く、その後、動画等で先生の活動を興味深く拝見させていただいていました。


 細身でスラっとした体形で手足が長く、しかもシュッとしたスタイルのため演武が映える師範です。私のような日本ネイティブな柴犬体形とは全く異なります。うらやましい…(笑)


 さて、それはさておき岡本先生は、曹洞宗のお寺の生まれで、22歳での春に合気道に出会い、合気会本部で修業されてきたそうです。また、ご主人が大学で教鞭をとられる方で、やはり合気道家のクリスさん、そして二人の子供(長男、次男)を伴って、米国のオレゴン州のポートランドに移住、子育てしながら合気道を続けられたそうです。凄い!! 本人の努力ももちろんですが、きっと合気道に理解のある家族なのでしょうね。


 ちなみに、移住先のポートランドで自分が稽古を続けたいがためにポートランド合気会を設立。その後、帰国する2003年まで道場長を務められたそうです。


 その後、フランスのパリでクリスチャン・ティシェ師範に師事。日本に帰国後、京都の西陣に合気道京都を設立し、現在に至るそうです。なお、(公財)合気会七段です。







 第4章では、合気道との出合いの地である合気道本部道場での稽古づけの日々と、現在の拠点である合気道京都(西陣道場)の成立過程や活動を紹介するとともに、「稽古法」と「指導法」についての特別インタビューが収録されています。


 そして巻末には用語解説と技の連続写真を掲載されており、合気道家だけでなく合気道を知らない方にも読んでいただけるようになっています。


 特に印象に残ったのが武道に対する思い、 

 「私たちは、伝統の中で培われてきた武道という『より完成された人間になるための、生きる道』を世界に向けて発信し続けている。

 バレエで頂点を目指す日本の若者達がローゼンヌやパリのオペラ座を夢見てきたように、世界の合気道家たちは「AIKIDO」の祖国、日本を目指し夢を見る。日常の暴力が絶えない国で育った若者が、平和の武道、合気道に出会い「いつか自分の国をそうするんだ」という誓いのもとに地球の裏側からやってくる 。

 そんな彼らの熱い思いを、私たち日本の武道家はしっかりと受け止めなければいけない。日本古来の伝統という価値観念の上に胡坐をかいているだけでは「BUDO」は世界に根付いてはいかない。日常生活の中に実践的な武道の精神を取り入れ夜会に貢献し実践することに21世紀の武道家は真剣に向かい合うべきだと思う。

 杓底一残水、汲流千億人

 柄杓の底に残された一滴の水でも、清流に返してやればやがて多くの人の喉を潤す。一人一人がひとりが毎日の稽古に徹し、自分自身の中に平和を築いていけば世界中の人々が平和になる。気の遠くなるような希望だが、それが開祖植芝盛平船先生の合気への思いであったのではないか、と私は思う。」



 同感です。
 私もその一助となれるよう努めます。



 以下は書籍の内容です。
 よろしければご一読を…。





【Out of the World 武道は世界を駆けめぐる】

 「木版を叩く音が道場内に響きわたり、稽古が始まる。


 地球上のどこにいてもまったく同じ気持ちになる瞬間である。正面に礼をすると、阿吽の呼吸で木綿の稽古着と袴が擦れ合い、道場生たちが揃って礼をする所作で空気が振動する。
「お願いします!」

 さあ、今日もいい稽古をしよう! 」(本文より)


 本書は、世界で活躍する合気道家、岡本洋子がその活動をとおし、文化とは何か、武道とは何かを見つめなおした初の著作である。



第1章 トーゴ ヒエトロ
 遠く離れた日本の武道を日々稽古する少年たちに出会ったトーゴ--ヒエトロ


第2章 アメリカ ポートランド
 家族で移住し、初めて道場を開くことになったアメリカ--ポートランド


第3章 フランス パリ
 師と出会い、仲間を得た武道大国フランス--パリ


第4章 日本 東京・京都
 多くの国と地域で、文字通りじかにそこに住む人に触れ、関係をつないだ経験を振り返りながら、各国の人々が日本文化や武道に何を求め、それぞれの現実の中で、どのように武道を社会に還元しようとしているのか、その固有性、類似性を探り、武道を通した人間探求の道を描く。
 

 「先生、僕たちはなんで合気道をするんですか?」
 トーゴの小さな村で合気道をする少年の問いに、はたして著者はなんと答えたのか?
 本書を通し、著者の強さと美しさに通底する合気道と人への思いが明らかになるとともに、私たちはそこにさらなる進化と深化を見ることだろう!


著者について

岡本洋子(おかもと・ようこ)

1978年、公益財団法人合気会、合気道本部道場に入会、合気道の稽古を始める。79年渡仏。サークル・ティシエにて稽古を続け、81年に帰国。その後8年間本部道場で稽古を重ねる。

1989年渡米、オレゴン州ポートランドにポートランド合気会を設立し、2003年の帰国まで道場長をつとめる。

同年、合気道京都を設立。現在は京都を中心に、海外での講習会なども指導しながら、一稽古人として合気道探求中。合気道七段。




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2019年1月27日日曜日

【新版】合気習得への道―佐川幸義先生に就いた二十年

 「【新版】合気習得への道―佐川幸義先生に就いた二十年」が発売されました。
 
 
 旧版は持っていますが、重要な「合気について」の章が改稿されたと聞き早速注文!。
 
 
 なお、旧版との違いは、以下の通りです。
 
 
①「合気について」を改稿
 
②新章追加
 
③佐川氏語録を追加
 
④未公開を含む写真50枚追加
 
 


 合気道家にとって、なにか鼻につく文章が残念なのはあい変わらず(笑)ですが、そんなことより最も気になっていたのは以下の点‥。
 

 旧版では、合気について、「合気とは、人体の防御システムのスイッチを切る技術」と書かれていましたが、この点がどう改稿されたのか‥、ということ。


 結論から言うと、このことについて特に否定はしていませんが、「この点にこだわるのもいかがなものか‥」というスタンスの変化があったようです。‥あとは特に重要な変更点はなし。


 それから、津本陽氏の「深淵の色は‥佐川幸義伝」の書評でも書きましたが、易について随分とページを割いて書かれています。しかし、受け取り方によっては誤解を招きそうです。


 私も易については随分と学んできましたので、さほど気になりませんでしたが、このような世界にアレルギーのある方は、不快に思うかもしれません‥。きっと編集者も悩んだのではないでしょうか。


 ちなみに勉強になるよい写真がより多く掲載されています。
 

 最後に、「合気とは大自然との調和である」というのが結論‥。この点だけで言えば、合気道も大東流も到達点は同じであるとということだと思います。


 結局のところ、日本武道の神髄は、「大自然との調和」なのでしょう。


〇以下は参考です。


カラー口絵 佐川幸義先生演武写真


第一章 佐川幸義先生演武写真集


第二章 数学の研究と合気修得に明け暮れた日々 


第三章 大東流合気武術 佐川幸義先生 


第四章 佐川先生の顕彰碑と津本陽氏の遺作 『深淵の色は 佐川幸義伝』


第五章 合気について


第六章 佐川幸義先生の修行時代―― 実弟・佐川廣氏談


第七章 佐川幸義先生 語録 


第八章 思い出アルバム
佐川先生のご家族 / 在りし日の佐川先生 / 佐川先生と共に



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2019年1月7日月曜日

稽古は合気(剣道時代平成31年2月号)

 明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いします。
 
 
 さて先日、フラッと立ち寄った本屋で「稽古は合気(剣道時代平成31年2月号)」の文字を発見! 早速購入しました。
 
 


 
 合気とは、合気道で全世界に有名になりましたが、元々は剣術用語です。
 
 
 このようなことから、剣道における合気について、様々な剣道家の方に直接伺ってきましたが、現在まで腑に落ちる答えをいただくことができませんでした。
 
 
 また、合気について論じた書籍・文章は少なく、研究家としては資料不足に悩まされてきました。
 
 
 しかし今回のこの特集で、高名な剣道家の林邦夫範士範氏八段ほか多数の先生の解説が掲載されており、たいへん勉強になりました。
 
 
 さて、詳細は省きますが、林先生によると、
 
①合気とは相手と気を合わせること。
 
②相手と自身の間合いにおける感覚的な技術
 
③※相手と気を合わせ一つになる技、さらに相手の力に合わせる術
 
 
 ‥と表現されています。
 
 
 また、林先生は、「合気の必要性を感じたのは、40歳代後半の八段審査を受信する頃」のようで、結局、正しい基本と理合が身につき、それから一つ上の剣道を目指すために必要な心的技術と理解されているようです。
 
 
 そして重要なのが、「合気の稽古は、見事に打つことができますが、見事に打たれることもあります。理合を知っている剣士には有効でありますが、理合いを知らない剣士には通用しないのです」との言葉‥。
 
 
  そこで、新陰流の理合「活人剣」と「殺人刀」を応用し、理合を知っている者には「活人剣」で、理合を知らない者には「殺人刀」で対応するようにしたとのこと。
 
 
 結局のところ、合気になる者には「活人剣」で、合気にならない者には「殺人刀」を応用したのでしょう。
 
 
 剣道では、相手の気の動き「気の方向性」を感じ、そこから打突の機会を見出すものですが、その機会を見出すタイミングを計るため、合気、つまり気を合わせます。このような理合では、確かに上記の戦法が有効になることでしょう。剣道の世界ではそうなると思います。
 
 
 しかし、体術の理合ではイメージしにくい‥。
 
 
 ただ、合気道、大東流の合気も「相手と気を合わせること」に変わりはありませんし、合気道開祖植芝盛平先生や大東流の佐川幸義師範なども同様のことを話されている。出発点は同じはずです。
 
 
 結局、剣術と体術では異なりますが、この剣術の合気をさらに深めたものが、合気道や大東流の合気だと思います。
 
 
 ‥年始早々、よい研究資料が手に入りました。
 
 
 ありがたい‥。
 
 
 興味のある方はぜひお早めにご購入ください。
 



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2018年11月10日土曜日

合気道に活きる(多田宏師範著)

 これは「歴史に残る凄い本」だと思います。


 合気道を真面目に学ぶ方には、本気でおススメします。ぜひご購入ください。




 日本武道館発行の書籍は、時代に左右されない名著が多いと感じていますが、この本もその一つだと思います。


 合気道の歴史はもちろんのこと、内弟子しか知らない開祖の言葉、鍛錬法、呼吸法、考え方、そして断食業等々が網羅されており、合気道に限らず、物事を追及する仕事につかれている方には必ず益することと思います。




 多田先生の演武は、毎年日本武道館で拝見していますが、88歳にしていまだ衰えをしらないキレる技を表現されています。生きる超人といったら失礼でしょうか。


 植芝盛平先生、そして中村天風先生とこれ以上にない素晴らしい師匠に恵まれ、その師匠の教えを一生をかけて研究、そして体現されてきました。その過程と結果を惜し気もなく披露されており、戦前生まれの心豊かで真っすぐな人間性を感じます。


 この書籍を通じて、日本武道のエッセンスをぜひ学んでいただきたいと感じました。




 最後に一番心に残った個所を引用します。

〇人の短所を突くな
 「喧嘩しても議論しても、人の弱点を衝くのが普通だ。屹度勝つにきまっているからな。けれどもそれでは人を殺すといふものだ。おれの師匠(山岡鉄舟)など全くそれと反対だった。議論でも撃剣でも、決して相手の短所は突かない。いつでも長所長所と狙ってゆく。だから
相手は面食らって、煙に捲かれてしまったものだ。八幡の和尚も『人の短所を突いてはいかぬ』と戒められていた。
余程偉くならないと出来ぬ業だが、未熟でもそのつもりでぶつかってゆくんだね。自然と人物が大きくなる」

 
 新たな修行の指針ができました。ありがとうございました。



1.生い立ち
(1)原点
(2)幼稚園から
(3)第一東京市立中学


2.師との出会い
(1)松濤 船越義珍先生
(2)植芝盛平先生・吉祥丸先生
(3)中村天風先生
(4)日野正一先生・みちゑ先生


3.生き方の方針
(1)植芝道場 先輩の教え
(2)命の基を訪ねて
(3)一生の方針を定める


4.植芝盛平先生の教えと稽古
(1)気の錬磨
(2)合気道の心
(3)心学の道、心法の道
(4)稽古法とは
(5)稽古の目的、人の生き方
(6)「機」について
(7)錬る
(8)自然な動き
(9)場を主宰する


5.合気道の普及
(1)合気道の発展
(2)「気の流れ」錬磨
(3)ヨーロッパの合気道
(4)合気道の国際的普及
(5)気の流れと縁


6.呼吸法(調気の法)


7.稽古を顧みる

8.あとがき


多田宏師範略歴
昭和4年(1929)12月14日生。東京都出身。早稲田大学第一法学部在学中の昭和25年、植芝道場に入門、合気道を始める。植芝盛平先生、吉祥丸先生に師事。同年、天風会入会、中村天風先生に師事。同年、一九会道場入会、日野正一先生に師事。昭和27年早稲田大学卒業。合気道の稽古と日本武道の歴史研究を専門とする道に進む。合気道本部師範・防衛庁師範を務め、慶應義塾・学習院・早稲田の各大学合気道会設立に尽力、師範となる。昭和39年渡欧し、欧州各国での合気道普及に尽力。イタリア合気会を創設。現在、(公財)合気会本部師範、イタリア合気会主任教授など。また、合気道多田塾を主宰。合気道九段


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2018年10月13日土曜日

深淵の色は 佐川幸義伝

 「人間は進化しなければ退化していく。同じところに停(とど)まることはない」


 「何でも教わろうというような弱い精神では教わっても覚えきれなくなって忘れてしまうのだ。自分で開拓しようという気概に満ちている人が、教わったことを生かせるようになる。心構えが違うのだ。」 


 大東流合気柔術の佐川幸義師範の伝記「深淵の色は 佐川幸義伝」(実業之日本社)が発売されました。





 作者は津本陽氏。


 大東流関係の著作は、「鬼の冠」、「孤塁の名人」に続き三冊目だと思います。いずれの作品も佐川幸義師範の神技を伝える貴重な資料となっています。


 今回の作品は、師範の人となりやご家族のことなどの私生活に一歩踏み込み、そして師範没後の道場のことなども書かれていることから、とても興味深く楽しめました。


 その中でも驚いたのが最終章の「秘密の世界」。


 「先生の蔵書は優に一万冊を超える。武術書以外に特に目立ったのが大量の易の本だった」とあり、佐川師範と易に関することが書かれています。


 師範は易をかなり深いところまで学ばれていたようです。


 私が以前から、「武術を学ぶ者は易学を学ぶべきだ。」、「柳生家や山岡鉄舟先生などの影響から武道家が禅を学ぶべきとの話がある。これはこれでもっともなことではあるが、古今東西の伝書をひも解くと易を学んだ武道家のほうが多いと思う…」と話をしたら、「えっ占いをすすめるのですか?」と怪訝な顔をされることが多かったものです。


 実はタイ捨流も、易を学ばないと伝書の意味さえ理解できないことになっている。


 確かに禅も日本武道に多々影響を与えており、とても有益だと思いますが、同時に易もたいへん有益であると私は考えています。


 なぜ現実主義者の武道家が易に惹かれるのでしょうか?


 ここについてはあえて記しません。
 ぜひご自身で理解してほしいと思います。


 しかし、佐川師範が相当深く研究されていたと思うと、この世界の権威者から同意を得られた気がして嬉しくなりました。


 この書籍は、武道家や合気研究者にはおススメです。
 

 さて、読書の秋ですね。


 心に残る良い本をじっくり吟味し、ゆっくりと読書を楽しんでみてはいかがでしょうか。



【本の内容】
 神技の深淵へ。大東流合気武術を極めた天才武術家の生涯と弟子たちが見た素顔―武道小説の第一人者・津本陽、渾身の遺作。人生を切りひらく達人の教え。


私は先生の謎のような生涯をふたたび探り、
合気の神髄を探る作業を試みることにした。
誰も見たことのない深淵の色を語るように、
佐川先生の合気を語ることがどこまでできるだろうか?
(本文より)

津本陽が迫る合気の神髄、武術の極み。

【目次】
第一章 ちいさな閃(ひらめ)き

第二章 疾風の打ちこみ
第三章 ふしぎな機縁
第四章 師弟のつながり
第五章 言葉のない会話
第六章 理と気
第七章 佐川合気活法の神髄
第八章 武田惣角先生の足跡
第九章 先生の息子さん
第十章 秘密の世界


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2018年9月7日金曜日

「太気拳・意拳研究ノート」

 素晴らしい本です。


 中国と日本を通じて、現在までに、これほど詳しい意拳の本はなかったと思います。


 帯にはこうあります。
 「享年53。最後までひたむきに武術を追い求め、その道統を次代に伝えるために遺した言葉の数々。ここにあるのは、著者・佐藤聖二の生きた証しであるとともに、 祈りとも言える武術への想いだ。


 名著です。
 少しでも興味を持たれている方は、購入されることをおススメします。





 
 この本は、著者・佐藤聖二氏が生前に、インターネット上で2009年11月13日から2015年4月23日まで発表していた、ブログ「太気拳(意拳)拳学研究会」に残された内容を、氏の研究成果として書籍にまとめたものです。


 このため、よく咀嚼された優れた参考書になっており、読んでいて飽きません。


 禅の考案の如く、じっくりと少しずつ楽しむのに向いています。


 枕元に置いて、ひも解く楽しみが多い書籍ですね。


 よろしかったら、どうぞ。



【著者プロフィール】
  佐藤聖二(さとう せいじ)  1961年生まれ 東京都出身

 高校2年生(18歳)で、太気拳創始者・澤井健一宗師に入門。以後、太気拳の指導を受ける。

 1983年、22歳の時に北京に留学、その際に、澤井宗師の兄弟弟子の姚宗勲師に入門。澤井宗師より「太気拳と意拳を結ぶ“架け橋"になってほしい」と託され、これに務め、澤井宗師没後も太気拳と意拳の交流・発展に貢献する。

 1985年帰国。1989年「太気拳(意拳)拳学研究会」を発足、多数の後進の指導に尽力する。

 中華の料理人として2004年より東京・岩本町に本格四川料理店「巴蜀」を開業する。 2015年6月9日永眠、享年53。



【参考】

 第1章 佐藤聖二ブログ(2009年11月13日~2015年4月23日)
      神如霧豹、意如霊犀 その1/太気拳の練について ほか

 第2章 佐藤先生通信(『太気至誠拳法通信講座』より)
      太気拳との出会いと入門時代/拳法漬けの少年時代
      太気拳は、いつのまにか強くなる

 第3章 中華料理について(2015年2月10日~2015年4月20日)
      中華料理にハマって…/長春で食べた東北料理、大拉皮
      清蒸海上鮮(清蒸石班魚)=ハタの姿蒸しほか




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2018年8月10日金曜日

「空手の合気 合気の空手」

 先日発売された「空手の合気 合気の空手‥剛柔流と大東流、共通原理に極意あり!」を読んでみました。



 表紙の帯には、「本書では、空手に秘められた柔術技法、合気技法を解き明かす!」とあり、なんとも興味深い‥。


 そして著者は、老舗の名門剛柔流泉武会の三代目宗家。


 泉武会は、昭和の初期より、沖縄出身の初代宗家泉川寛喜が神奈川県を中心に普及に努められた歴史ある道場です。大東流の吉丸慶雪氏が学んだことでも知られています。


 ‥ということで早速購入。


 内容としては、剛柔流と大東流の共通点、剛柔流の型の三戦や転掌で身体を練り上げ、体之合気や小手之合気に至る方法、さらには具体的な技の掛け方である「掛け手護身技法36手」等々、興味深い内容です。


 月間秘伝系の書籍は、真面目なものから怪しいものなど千差万別ですが、この本はいたって真面目な作品で好感がもてます。


 なお、参考までに元剛柔流の空手家で、その後、合気道も学び始めた私の知り合い(大先輩)が語っていた言葉を紹介します。


 「今でも三戦はやってるよ。健康にもいいしね。特に二日酔いにはとても効く(笑) それに稽古量が少なくても合気道の威力が増している気がする。これは、きっと三戦の影響だと思う。体感的に間違いないと思う‥」、


 きっと何か得るものがあると思います。


 よろしかったらどうぞ。



【参考】

第1章◎初代宗家・泉川寛喜

第2章◎建築と空手、両道を歩む

第3章◎大東流・吉丸慶雪先生に学ぶ

第4章◎剛柔流と大東流に共通する技法

第5章◎型とは

第6章◎三戦で獲得する「体之合気」

第7章◎転掌で獲得する「小手之合気」

第8章◎型に見られる合気技法

第9章◎掛け手(カキエ)とは

第10章◎掛け手護身技法36手

第11章◎武道体を創る身体鍛練

第12章◎沖縄と空手の歴史的検証


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2018年7月28日土曜日

「大東流合気柔術琢磨会 その技法と合気之術」

 日本武道館から、「大東流合気柔術琢磨会 その技法と合気之術」が発売されました。

 


 早速購入してみましたが、その目的は、「第4章 合気之術」!


 私の掴んだ合気との違いの確認のため、かなり期待して購入しました。


 もちろん合気の術の全てについては書かれていませんが、私の知っている今まで読んだどの本より、詳しく書かれているようです。


 例えば、「この術を用いた『究極の抜き合気』が功を奏すると、相手は身体(特に膝・腰)から瞬間的に力が抜け、その場にそのままへたり込むか、あるいはこちらが誘う方向にふらっと倒れていくのである‥」、


 「倒れた相手に、どんな感じがしたのか尋ねてみると、『技を掛けられた瞬間、それまで掴んでいた道着や小手が、突然、自分の掌の中から消え失せたように感じた。それに驚いて無意識に飛び下がり、気がついてみれば倒れていた』という答えであった‥」


 「そのうちの一つが『触れ合気』で使う合気ポイントである『前肩』である‥」


 「もしも武道界にノーベル賞のような賞があったならば、私の大東流における『母指丘の発見』は、その受賞に値するほど価値がある‥」


 ‥等々、かけるポイントなどについても一部公開されています。


 これは嬉しい! 楽しめそうです。


 合気を研究されている方には、「手元に置いておくべき書籍」だと思います。 


 おススメです。



【参考】

1章 大東流合気柔術の歴史と特色が合気之術である

2章 急所技

3章 関節技

4章 合気之術

 第1節 抜き合気
 
 第2節 入れ合気、 触れ合気
 
 第3節 肘延ばし
 第4節 両手捕リ合気投げ
 
 第5節 前肩詰め合気、肩載せ合気

 第6節 禁忌の技 綾に組む
 
 第7節 手甲の合気と腰の砕き
 
 第8節 合気と拍子
 
 第9節 掛手と合気(一)
 
 第10節 掛手と合気(二)
 
 第11節 手の内の合気と手甲の合気
 
 第12節 背合気と寸口の合気

 第13節 小手の合気
 
5章 琢磨会のその他の技法

6章 合気は技術である


 
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2018年5月21日月曜日

山岡鉄舟「修養訓」

 久しぶりに山岡鉄舟先生に関する書籍が販売されました。


 
 ※活学新書「山岡鉄舟修養訓」 致知出版社


 著者は、山岡鉄舟先生ゆかりの全生庵の平井正修(ひらい しょうしゅう)和尚。


 これは読むしかない‥。


 せっかちな私は一日で読んでしまいましたが、感想としては注釈がもう一つ‥。


 多分、剣に関しては素人なのでしょう。


 山岡鉄舟先生の語録を味わうのによいと思います。


 
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2018年5月14日月曜日

合気の極み

 BABジャパンから発売された錦戸無光師範の「合気の極み」を読んでみました。


 以前から、師範についてはいろんな噂話を耳にしており気になっていました。


 その噂の一つは、「身体に光を流せる」というものでしたが、この本でその内容の一端を説明されています。よく考えたら、その噂話を聞いた私の先輩が福岡まで会いに行かれたこともありましたね。


 この本は、錦戸師範が語られた内容をそのまま(あえて手を加えずに‥)書籍にしたものなのでしょうが、感覚的な方にありがち?な、あちこちに飛躍する内容のため、文章が理解しがたくいろんな意味で難解です。


 私は、錦戸師範の合気の解釈について知りたかったのですが、残念ながら、その点については深いところまでは触れられていません。‥いや、合気は言葉では説明しにくい部分もありますので、そのせいかもしれませんね。


 なお、宗教色もかなり強い本です。
 

 興味のある方はどうぞ。

 
 


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2018年5月1日火曜日

「合気道 稽古とこころ」‥現代に生きる調和の武道

 合気道道主である植芝守央先生の書かれた「合気道 稽古とこころ」‥現代に生きる調和の武道が発売されました。




 内容としては、前道主である植芝吉祥丸先生の書かれた「合気道のこころ」の現道主版というところでしょうか。


 道主からみた翁先生、前道主、そして家族、また、合気会の歴史、合気道の理念、技の成り立ち、稽古することの喜びなどがわかりやすく解説されています。


 道主の技術本は多数ありますが、合気道の歴史や精神的なことを書かれたのは初めてではないかと思います。


 合気道の素晴らしさを理解するのにお薦めです。


 一読し、改めて当会の理念である「人間性の向上と健康的な心身の獲得を目的に日々の稽古に取り組み、合気道の素晴らしさを一人でも多くの人に伝えるために活動する」ことが間違っていないと確信することができました。 


 よろしければ、ご一読を‥。


 
【内容紹介】

 対立・衝突を超越する真の強さ・人生の糧となる「道」の豊かさ、世界130の国と地域、国内2400の道場で愛好される合気道。

 稽古の根底にある高邁な思想。試合・競技はなく、稽古・鍛錬を通じ、互いに尊重しあうことで磨かれる真の強さ。

 世界で共感される合気道の哲学を宗家・植芝守央道主が現代人に向けて説き明かす。

―――目 次―――――

1・歴史――合気道のあゆみ

一つ一つの積み重ねから

合気道開祖・植芝盛平

「開かれた合気道」――吉祥丸二代道主の想い

初めての公開演武

出版による普及・啓蒙

組織の拡大

世界に広がる合気道――銀の架け橋

2・稽古とこころ

武は愛なり――現代に生きる武道

合気道練習上の心得――「練習は愉快に実施するを要す」の意味

稽古法そのものに合気道の理念がある

素直であること

構えと間合い

基本の体捌き――入身・転換・転身・転回

表技と裏技

呼吸力と呼吸法

天地と一体となるということ――自然の理に逆らわない

技の稽古を通じて体を練る

稽古を積み重ねた先に発揮される総合的な力

基本に極意がある

硬い稽古と柔らかい稽古

技に完成はない

なんのために稽古をするのか

合気道に試合はない

日本の心

合気道の稽古法「気形」

形を繰り返した先に個性が輝く

合気道の修行は合気道だけでいい

審査も演武も普段通りに

合気道で強くなれるのか?

礼に始まり礼に終わる

即結果を求めず

先人を敬うということ

3・道 統

祖父・植芝盛平

父・植芝吉祥丸

ともに道を歩む姿勢

一日一度、本部道場の稽古には植芝の人間が立つ

直系が道統を継ぐということ

道場という文化

合気道本部道場

決意

指導のはじまり

厳しい時代を乗り越えた強さ、おおらかさ

最大の試練を感じた時

道主継承

和を実践していくこと

出版社からのコメント

合気道を知らない人、入門して間もない方でも無理なく理解できるよう、合気道の理念、技の成り立ち、稽古することの喜びなどを道主がわかりやすく解説しています。

 稽古の糧としてだけでなく、合気道の素晴らしさを家族や友人に伝えたい人、「合気道をやってみようかな」と考えている方にもお薦めです。



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2018年1月29日月曜日

狂乱

 大好きな時代劇(小説)「剣客商売」に狂乱という回があります。


 重苦しいストーリーと悲惨な結末になんとも辛い思いはするのですが、秋山小兵衛が師匠として諭す言葉がなんとも味があってよいものです。


 内容は、足軽という身分に比して強すぎる腕前を持ったがために、うとまれ、踏みにじられ、孤独においこまれた本多丹波守の家人で無敵流の剣客・石山甚市。


 石山甚市は、やさしく扱ってくれたのは親と剣の師匠だけであったが、醜男で足軽の身でありながら無敵流の剣の達人であるがゆえに、武士仲間から恨まれ・疎まれて過ごしたために心が捻じ曲がった剣客となってしまった。


 ‥という感じですが、


 甚一に対し、小兵衛は‥。

 
 「お前さん、そんなに死にたいのかい。己の気持ちの赴くままに刀を振り回して斬ったり、斬られたり、それが真の剣の道か。今の世の中、剣の道を極めたところでいったい何になる。ともすればひとかどの剣士になることが、かえって己の生涯を誤ることにもなりかねん。」


  「一昨日お主が路上で手にかけた侍な、木村何某という黒田藩の侍で、剣の腕を買われて士官がかなった新参者だったそうだ。ところがあのような死に方をされては藩の名にかかわる‥。遺体は引き取るが下手人の探索は無用‥、一切無かったことにしてくれと申し入れがあったそうだ。どうじゃ、剣によって立つものは、剣によって滅ぶ。哀れなものではないかい‥。」と諭す。


 まったくそのとおりです。真の武道は人生の糧になるべきものです。‥がしかし、そのことを理解している指導者(師)は少数だと思います。


 競技、そして格闘技を志す者は指導者としての技量を求めて道場を選ぶべきです。しかし、自身の人生の向上、糧を願う者は、人間性の高い敬虔な人物を求めてほしいと思います。


 さて、その後、哀れに思った小兵衛は、大治郎の道場で一緒に稽古をしようと石山を誘う。


 「わしと一緒に稽古をすれば生き返るぞ。 真の剣術というものは、人を生かし己も生かすものじゃ。 己の強さは他人に見せるものではない、己に見せるものだ。このことを忘れるな。」


 その後、甚市は、「あのような人がいるんだなぁ。(小兵衛のことが)大きくて豊かで‥、何もかも包んでくれそうな、あのような人が‥。あの人(小兵衛)についていけば、‥そうすれば確かに‥、俺にも新たな道が見いだせるかもしれん。今とは別な心静かな道が‥。」 そう思った石山は、小兵衛の門人になることを決心した。


 秋山小兵衛はその胸中を思いやり声をかけてやろうとするのだが、一足遅く、侍は狂暴な血の命ずるまま無益な殺生に走る‥、狂った甚一に対し、小兵衛は約束した稽古と称し、やむなく斬ることに…。


 悲しい話です。


 深くは申しません。
 武道とは、剣とは、次の言葉に集約されていると思います。


 「剣道では島田虎之助が『それ剣は心なり。心正しからざれば剣また正しからず。すべからく剣を学ばんと欲する者は先(ま)ず心より学ぶべし』と言っている。心が正しければ正しい技、正剣になり、『心正しからざれば』。つまり邪心だとごまかし稽古になる。だから剣を志した者は先ず心を正しくせよということにである」 小川忠太郎剣道範士


 心というのは、正しくしようと努力すれば正しくなるし、放任しておくと糸の切れたタコのようになります。「放心を求めよ」と孟子が言っているように、自分の方へとって返す努力が大事です。


 しかし心を正しくすると言っても、心というものは、どこにあって、どんな形をしたものか、それを知らずに平常心などと言ってみても、それは本質を欠いたただ言葉に過ぎません。釈宗活老師も
「心とは自己なり」と言っています。結局のところ、心というのは自己、自分のことでしょう。


 武道の本質とは、ここにあるべきだと信じます。


 武道とは、心を宇宙の法則に合致させ、よりよい人生を歩ませることが本質です。


 武道と競技の違い、ここのところを誤らないように努めたいものです。



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2017年11月27日月曜日

カエルの楽園

 只今、衝動買いをした本を消化中です(笑)


 今回は、百田尚樹氏の最高傑作と噂される「カエルの楽園」を読んでみました。



 「安住の地を求めて旅に出たアマガエルのソクラテスとロベルトは、豊かで平和な国ナパージュに辿り着く。そこでは心優しいツチガエルたちが、奇妙な戒律を守って暮らしていた。だがある日、平穏な国を揺るがす大事件が起こる‥」


 具体的には、日本を中心とする東アジア諸国の関係をカエルの国になぞらえて書かれた小説です。 


 近隣諸国との問題は、今に始まったことではありませんが、北朝鮮情勢が緊迫感を増してきている現状では、ぜひ読んでおいていただきたい本です。


 ただ、高尚な本ではなく、また、特に面白くもありません(笑)


 近隣諸国及び日本国憲法等の現実的な問題について、課題提起した本だと思います。


 よろしかったらどうぞ。


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2017年11月20日月曜日

「君にはもうそんなことをしている時間は残されていない 」

 少し時間が出来たので、買っていて読んでいなかった書に手を出してみました。
 恥ずかしながら衝動買いをした本がけっこう積んであります(笑)


 今回は、「君にはもうそんなことをしている時間は残されていない」です。



 
 「時間というのは、誰にとっても命の断片だ。人はこの世に生まれてから、誰もが時計の秒針と共に死に向かって生きている。そして唯一、時間だけは全人類に平等に与えられている」。


 当たり前のことで理解もしているつもりですが、日常の雑事に追われ、時間の使い方について深く考えることを放棄していた気がします。


 人生何が大事かと言えば、やはり生きている時間をどう使うか、逆に言えばそれがその人の人生だとも言えます。


 そして、プロローグにある「1分の遅刻は、相手の命を軽く見た証拠」との言葉にドキッとさせられました。


 確かにそうかもしれませんね。


 違う視点から、遅刻の意味を学ぶことができました。


 時間について考えるよい本です。


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2017年10月2日月曜日

素質を養う

 読み返した本の中の一節に面白い表現の文章がありました。


 「生まれて後に得る人間的な芸能知識というものは、むろん、人の一生を支配するものではあるが、世人の多くは、これらを得るということにのみ、直接、熱中して、これらを得ることができる素質を養うということを忘れている」。


 この本には解説は全くありませんので想像になりますが、「素質を養う」とは、人間性を養うことではないかと思います。


 いくら能力が高くても、勤勉さがなければ「二十歳過ぎればただの人」…。


 能力を得るための人間性、勤勉、実直、素直、根気等々…、
 この人間性を培うための努力がまずもって必要ではないかと思います。


 別の表現をすれば「徳を養う」という風にも言えるのでしょうか。


 「素質を養う」…、今年のテーマにします。


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2017年9月11日月曜日

真の教養

 安岡正篤氏の著作の中に「真の教養」という一説がありますので紹介します。


 「およそ真の教養とは、人類の有する偉大な著作に親しむことによって得るものです。そこで昔から優れた定評のある良い書物を少しずつ読むことであります。

 人間としての教養の書、人としての哲学の書、修養の書というものを、注意して毎日たとえ三枚でも五枚でも、そういう書物を必ず読むようにする。いわゆる座右の書を持つことが必要です。」


 随分前にある有名な政治家にお会いしたことがありますが、その方が「私は本を読まない人物とは個人的にはお付き合いはしない。‥話が面白くない‥、時間がもったいない‥、云々」。
 きつい言葉ですが、まったくもってそのとおりだと思います。


 さて、私の座右の書は「易経」です。
 あとそのほか数冊‥。


 最近、めっぽう忙しいので、本当に少しずつですが時間を見つけては目を通してます。
 もう無理して読むことはしていません。
 楽しいから読んでいます(笑)


 武道というと、なんとなく「禅の書物」みたいな印象がありますが、これはほんの一部です。実は、研究者の間では、古来の武道家が一番多く座右の書としたものは易経だと言われています。


 この易経、いいですよ。
 宇宙の真理がこの一冊に詰まっています。


 全ての武道、全ての仕事、全ての方の人生等々に応用可能な書です。


 さぁ、お迎えまでにどれだけ理解できるのか楽しみです(笑)



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2017年9月4日月曜日

合気道とダーウィン

 先日、英国の博物学者であるチャールズ・ダーウィンの書のある一節を読んでいて、思わず「うっ」と唸ってしまいました。


 その一節とは?


 「生き残るのは、最も強い種でも、最も知的な種でもない。最も変化に対応できる種が生き残るのだ」 チャールズ・ダーウィン


 びっくりです。
 武術の極意ですよね。


 日本剣術的に云うと新陰流の「転」。


 今風では、「転位、転体、転技」というところでしょうか。


 狙った技は外されます。


 敵の攻撃に全て変化にて対応するのが「随敵」。


 具体的には、敵の攻撃を「転位、転体、転技」で対処します。


 身体だけでなく、心や考え方まで柔軟にして対処する。
 もちろん居着きは厳禁です。


 ‥合気道と同じですね。



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2017年8月14日月曜日

水鏡

 先日、ベストセラー「置かれた場所で咲きなさい」の著者、ノートルダム清心学園理事長である渡辺和子さんが、ノートルダムホールにある「水鏡」について説明されていました。


 「水鏡」とは、中央棟の前にある直径10mの水のオブジェのことです。


 キャンパス内の名所の一つのようで、「立ち止まって自己の内面を見つめてほしい」という願いを込めて創られたそうです。


<要旨>
 「この水鏡にお月様が映っていて、そのお月様がグラグラして見えるとする。それは、お月様が歪んでいるのではありません。水が波立っているのです。皆さんの心も同じです。心が波立っていては物事が正しく見えません。何か困ったことが起こった時、この水に自分の姿を映してよく考えてみなさい。あなたの心が歪んでいないか? 心が波立っていないか? 冷静になって、一歩引いて考えてみましょう。そうすると分かってきます。何もかも周りのせいにするのでなくて、あぁ、私自信も悪いのだって理解できます。」


 実は、この話に武道の極意が隠されています。
 いやいやこれは面白い!


 タイ捨流の極意の言葉である「水急不流月」にも通じます。


 キリスト教的表現と言うより、日本の禅的表現に近い気がしますが、キリスト教にも「心を鏡」と表現する場合があるのですね。それとも日本化したキリストの教えの表現なのでしょうか。


 やはり、宗教と日本武道の精神的境地は一致するようです。


 しかし、この水鏡、本物を見てみたい気がします。
 製作を企画された方は、どんな立派な方だったのでしょう。



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2017年8月7日月曜日

ツキを呼び込む魔法の言葉

 ベストセラーになった「ツキを呼び込む魔法の言葉」の著者である五日市剛氏のお話を紹介します。


 五日市さんが学生時代に海外を旅して回っていたところ、旅先のイスラエルで偶然出会ったおばあさんから、ある言葉を教わったそうです。


 その言葉が「ツキを呼び込む魔法の言葉」。


<魔法の言葉>
 ○嫌なことがおこったら「ありがとう」。
 ○嬉しいとき、楽しいときには「感謝します」。


 いやいや、これは単純だが奥が深いですぞ‥。


 使用方法も簡単です。
 この二つのありふれた言葉を、嫌なとき、そして、嬉しいときや楽しいときに自分自身につぶやくだけです。


 そうするといつの間にか「魔法の言葉」になっていくそうです。


<五日市剛氏講演録より>
「ピンチや嫌な出来事に感謝して呼吸を整えていくと、不思議とそれ以上、嫌な気分にはなりません。なぜかいい智恵がわいてきやすくなりますし、次の一手が浮かぶこともある。それをタイムリーに行動に移すと、どんなことでも意外と簡単に乗り越えられるようになるものです。

難題そのものに感謝して乗り越えると、それは大きな自信になります。すると精神的にも成長でき、同じミスは犯さなくなります。だから難があることは『有り難い』わけです。」


 「全ての物事に感謝せよ!」


 良く聞く言葉です。しかし、実行に移すにはなかなかたいへんですよね。


 中村天風氏の天風哲学「絶対積極」も同じです。最初からその境地にはなかなかたどり着けるものではありません。


 まずは、この辺りから少しずつ初めてみるのがよいのではないかと感じた次第です。


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2017年5月29日月曜日

武道的思考

 この本の著者である内田樹さんは、合気道の多田宏先生の門下で神戸女学院大学名誉教授の方です。

  「何かためになる本ないかなー」と書店で探していたときに偶然見つけた本。

  自身のブログを本にしたようで、視点が少し異なるので、少々違和感を覚えることもありましたが、堅苦しくなく楽しく読める珍しい武道本です。

 興味のある方はどうぞ。

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