宮崎県西都市を中心に活動している宮崎合気道会グループ「合気道元徳会」道場長による武道コラム - サムライハートSamurai Heart。私達は、合気道の素晴らしさを一人でも多くの人に伝えたいと考えています。興味のある方は、ぜひ一度見学にお越しください。詳細は、合気道元徳会のホームページをご覧ください。

2020年5月5日火曜日

合気道と悟り(姿勢、丹田、瞑想、空の世界)⑤(完)

 それでは、今回が最後になりますが、この世界に入ると何が起こるのかについて書いてみます。


 いわゆる気力(生命エネルギー)が、一瞬にして全身に注ぎ込まれますので、ストレスが洗い流され、心の中の全てがいったんリセットされます。


 また、悩んでいたことが小さいことに思えたり、どうでもよくなったりします。


【参考】
「人間の生命の本来は「空」である」

「心が空になった時、人間は一番強くなる」

「空の世界に入れば、空の世界の驚くべき力が、ぐんぐん生命に溢れてくる」

「瞑想とは、宇宙本体の偉大なエネルギーの中に、自分の命をひょいとつけることだ」

 中村天風先生の言葉



 私もこの世界に至るまで、気功法や呼吸法、そして、瞑想法というものは、呼吸でエネルギーを身体内に取り入れると理解していました。確かに深呼吸の効果は肉体的な部分でかなり強化されることがありますが、本質的な部分では異なっていたようです。


 ちなみにここに至ると体感的に空の世界のエネルギーと人が持つ生命エネルギーは同質のものだと理解できます。ここを実感すること、そして理解が大事。重要です。結局、この点を実感することで、仏教的には「すべてのものに仏心が宿る」の意味が真に理解できます。


 瞑想状態で「空」の世界に触れた時、空の世界のエネルギーと私自身のエネルギーが同じものなので、同調して空の世界のエネルギーが瞬間的に注ぎ込まれる‥、これが正解であり、気功、呼吸法、禅、禊、瞑想の本質はここにあるように思います。


 別の表現をすれば、意識の切り替えとも言えます。今風に言うと意識モードを切り替えることにより、宇宙、天といったものと波長、若しくは周波数を合わせることで、一瞬にしてエネルギーを取り入れる‥、という表現もできます。



【参考】
「瞑想とは、宇宙の根本主体と人間の生命が一体化することだ」

「宇宙の実相は、音なき世界、空の世界である。われわれが耳に聞いたり、感覚している響きや色の世界は、この現象界の仮の姿である。だからわれわれは、心の使い方ひとつで自らを空の世界に置くことができる。空の世界には、驚くべき甦りの力が溢れるほどたたえられている。空の世界に心が入ると、人の生命が宇宙の無限の力と結びつくのが、自然の原理である」
中村天風先生の言葉



 ここに至って初めて、「宇宙と一体になる」、「天と一体になる」、「大宇宙と小宇宙との合体」といったことが理解できるようになります。他の表現では、「神人冥合」、「神人合一」、インド哲学では「梵我一如」といったところでしょうが、たしかに体感的にもそういう風に感じます。


 そして、さらに重要なことが、この空の世界に存在する大宇宙のエネルギーに触れることで、我々の住んでいるこの世界の本質が瞬時に理解できることから、善悪等で区別して判断する差別智から、宇宙の本質を理解したうえで判断する無差別智に移行することになり、結果として、お経、古典、禅の言葉、聖書、哲学等々、本当の意味することが理解できるようになります。


 難解で理解できなかった禅語もより不思議と理解できるようになり、また、特に難解な(笑)、合気道開祖植芝盛平先生語録もより理解することができるようになりました。



【参考】
 「人には、心理を刹那的に直感する特別な作用がある」 中村天風先生の言葉



 さらには、この空の世界とは、「生命エネルギーの集合体」と「叡智の結晶」が混ざり合った存在だと感覚的に理解することが出来ますので、きっと、この段階に至った方が、この空の世界に存在する大宇宙のエネルギーのことを「神」と表現したのでしょう。神と同じエネルギーを持っている人間は、親子関係にも似ていることから、神道系の宗教団体の神の子思想もこの点からは正解なのだと思われます。


 影響としては、常に幸福感、満足感に浸っているためだと思いますが、物欲が少なくなりますね。正直、あの世に持っていけないものはどうでもよくなる‥、という感じです。天に徳を積むという陰徳思想さえ、「‥‥‥」という感じになります。


 悪影響?としては、瞑想状態を心身が求めるようになることから、瞑想時間の確保が必要になります。その時間がとれない場合は非常にストレスになります。このため、私の起床時間は3時45分です(笑) 雑事にわずらわされない時間の確保が必要になります。


 ただし最近は、瞑想時間が徐々に少なくてすむようになってきました。宇宙とのつながりのパイプが太くなるからでしょうか、朝15分~20分、夜15分~20分あれば十分です。一日で朝・夜の合計で最低30分の時間が確保できればありがたいというところでしょうか。ちなみに深まった瞑想状態は、睡眠を大幅に凌駕するようで、深い瞑想状態に入ることが出来る人は睡眠時間は短くて済むようになります。


 また副産物としては、人生上の大事な場面で、解決策が直感的に閃くようになります。これも宇宙とのつながりがなせる業なのかもしれません。こういったことが繰り返されるうちに「何が起こっても大丈夫」というような心持になり、結果的に空の世界のエネルギーに対する信頼の念が生じて、大いなる安心感を得ることが出来ます。


 ここで初めて信仰心の本当の意味が理解できます。


 本当の自信、いや信念とも表現できそうです。


 ただ、こうだからと言って、現実の世界は何も変わりません(笑) 


 わずらわしい雑事や俗事に追われることは続きますし、面倒な仕事が減るわけでもありません。あくまで面倒なものは面倒なのですが、その面倒な中での苦痛さがかなり軽減されるということです。


 重要なのは、「心配事はあるが、とるにたらないことと思える心境」、ここに至ることが出来たということです。宇宙とのつながりが得られたことでの大いなる安心感、そして無差別智による智慧が授けられたことから、空の世界にエネルギーに対して信仰心が芽生え、常に心の中に感謝の念が生じることになります。



【参考】
「瞑想を行えば、大山崩れたりといえども、泰然自若たり、という気持ちになれる」
 中村天風先生の言葉



 このことから結果的に生きることに対する意識が変化し、生きる希望にあふれた人生が歩めるようになるのです。


 これが私の現在の状況です。


 合気道を極めようと、20代半ばから思考錯誤しつつ、稽古を続けてまいりましたが、その結果、下根の私も、ようやくこのような心境に至ることができました。


 ここに至って分かったのが、最も重要なのが常に物理的・幾何学的に正しい姿勢を維持すること、そして、意識は深い深い静かな世界を求めること、の2点です。動く瞑想、動く禅と呼ばれる合気道は、はじめから心の静寂を意識して稽古します。きっと、このことがよかったのです。


 合気道を選んでよかった‥。


 心からそう思います。


 現在では、合気道に行法(個人の行法)として瞑想を取り入れることで、その本質に早く至ることが出来るのではないかと考えるようになりました。きっと合気道開祖植芝盛平翁もそうしてきたはずです。


 これからは、この点についてさらに掘り下げて研究を進めてまいりたいと思います。 


 これまで私を導いてくれた方々に深く、心より深く感謝申し上げます。


 ありがとうございました。


 


【リンク】
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