宮崎県西都市を中心に活動している宮崎合気道会グループ「合気道元徳会」道場長による武道コラム - サムライハートSamurai Heart。私達は、合気道の素晴らしさを一人でも多くの人に伝えたいと考えています。興味のある方は、ぜひ一度見学にお越しください。詳細は、合気道元徳会のホームページをご覧ください。

2020年4月25日土曜日

合気道と悟り(姿勢、丹田、瞑想、空の世界)③

 さて、ここからが本番(笑)です。


 今回は、見性悟道、いわゆる無念無想の境地についてお話しします。


 見性悟道は、合気道や武道などを趣味程度ではなく、「道」として学んでいる方々にとっての最終目標(目的)ではないでしょうか。


 さて、現在の私は、一通り稽古してから、若しくは稽古の前に座禅、立禅、正座法等々、何でもいいのですが、とにかく瞑想を行っています。


 現在は、基本的に天風会の安定打座密法と立禅をやっていますが、その時の姿勢は、座禅、立禅、椅子、寝てなど、正直なところ、気分に任せて適当です(笑)。あまりこだわりません。空の世界に入った瞬間は、身体は息をするのも忘れている仮死状態になりますので、その時に体勢が崩れないことが大前提です。まずは、一瞬眠っても瞑想状態に影響を与えない程度の幾何学的に強く正しい姿勢が求められます。これがないと心身脱落の境地には入れません。


 瞑想の前には事前準備として姿勢を整え丹田をつくっておくとよいです。丹田を整えておくというのがよい表現かもしれません。これは、早く深い静かな世界に入るための下準備になりますが、理由として、一つは安定した姿勢をつくるため、もう一つは、思考回路を遮断するためです。丹田をしっかり極めると、その瞬間思考回路がストップし、何も考えていない(考えられない)状態になりますので、そのまま深い瞑想状態に入ることができます。


 そうするうちにモヤモヤした白い煙のようなものが下から上がってきて、ストレスを洗い流してくれるような感覚が生じます。この時の感覚は、「すごくいい気分♪」という感じなのですが、聞いた話によると、この状態が「中国の洗髄経に書いてある洗髄状態だよ」という方もいます。


 曹洞宗開祖の道元禅師は、座禅のことを「いわゆる坐禅とは習禅にはあらず。唯これ『安楽の法門』なり」と表現されており、いわゆる坐禅とは、難行苦行ではなく安楽の行であり『安楽の法門』であると難行苦行を否定されています。


 安楽とは、「心身の苦痛や生活の苦労がなく、楽々としていること」なので、実は座禅とは元々は、「心も体も楽にしてくれる方法」だったのです。


 分かりやすく言うと「満足感」や「幸福感」等々、何でもよいのですが要は「気持のよさ」が羅針盤だと思います。禅とは本来、忍耐心、我慢等々とは対極にある存在だったようです。


 さて、次に思考回路がストップした状況から、意識モードが数段階に分けて切り替わっていきます。


 時には、身体の腕や手の中を、まるでホースの中を水が通って活性化していくような感覚が生じたり、何かが身体の中を貫通していく感じがすることがあります。また、手の指がぶくぶくと膨れ上がる感覚を得ることも度々起こります。この後は、物理的に凄く力が出ますね。不思議です。きっと、このようにまだまだ私達の知らない、知られていないことがたくさんあるのでしょうね。


【参考】
 「立禅は初めは5分、あるいは10分と短い時間しか持たないが、訓練を続けることにより、30分、1時間と立てるようになる。30分、1時間と立てるようになれば、自然のうちに無我の境地に入ることができる。この無我の境地に入っていくには、さほどそれを意識しなくても長い時間たっていると自然にできるようになるものである。」

 「(禅の最中について、太気至誠拳法創始者の澤井健一先生が言うには)『今夜の食事のこと、何か気に掛かること、何でも考えたものがあれば考えてもいいよ。足が痛くなれば、もうそれどころではないよ。頭の中がそのことで一杯になってくる。それを超えれば、もうそこには何も無い。』実際、立禅を行ってみたが、まったくその通りであった」

 「この苦しみを長年続けていると、一つの形ができ、体内に『気』が充満してくるのが分かるようになる。私が立禅を組み始めてちょうど5年くらいたってからのことである。電気でいう充電と同じように、体内に自然と『気』が充満してきたのを覚えている」
太気至誠拳法 佐藤嘉道


【参考】
「合気道がなぜ素晴らしいか。それは全ての力を抜くことを知ったからである。自分の体力的欲望をすっかり捨てたところに、無限の力が流れてくることが分かったからである」
万誠館合気道創始者 砂泊誠秀氏の言葉



 次に意識モードが深く静かな世界に切り替わっていく度に、この幸福感、満足感に包まれた状態を維持したい、止めたくない‥という感覚が強く生じます。


 そして、もう一段階意識モードが切り替わり、コクッ(という感じで)と「‥‥‥(意識ははっきりしているが、何も考えていない世界)」に突入します。


 この深く静かな、とっても深く静かなシーンとした世界‥、これが「空」という世界の正体で、この宇宙の実相とも言えます。



【参考】
「音のない、シーンとした静かな世界が宇宙の新実相で、そこには宇宙本体のエネルギーが遍満存在している」
中村天風先生の言葉


 いわゆるサマーディ、三昧と言われる境地です。合気道では、いわゆる「澄み切りの境地」というところでしょう。


 まだうまく説明できないのですが、意識はあるがまったく感情のない全てが客観的に見える(思える)世界、若しくはプラスマイナスのない世界と表現してもよい気がします。


 なお、この世界に入るのは実はまったく難しくないのですが、ただし、難しいと思っている人にはたしかに難しいかもしれないな、とも思えます。表現は難しいのですが、何年も厳しい修行をし、忍耐のうえに忍耐を重ねてからでないと行きつけない…、そう思っている人には難しいという意味です。


 以外に思えるかもしれませんが、すべての人がその世界に入ったことがあるはずです。実は、誰もが入ったことがある世界が、その世界なのだと認識できていないだけだと思います。その世界がどのような状態なのか理解していないからしょうがありませんが…。


 また、あまり知られていないことですが、瞑想なり座禅は、線香が燃え尽きる時間(約45分)行うとか言われていますので、その時間中(45分間)ずっとこの空の世界に入っているのではないかと思われがちですが、それは誤解です。空の世界に入れる時間は、普通は数秒から数十秒、長い方で1~2分というところでしょうか。例えば45分間瞑想を行うとすれば、空の世界に入る数秒から1~2分間が45分中に何回か繰り返すというのが本当のところです。なお、これは私だけの意見ではなく、その道に達したか方の共通認識です。念のため。


【参考】
「実我の境地は、一刹那である」

「本当にシーンとした気持ちが続くのは、私の場合でも1~2分だね」
 中村天風先生の言葉


 実際、この世界に入っている瞬間は、身体が仮死状態になることで意識(魂)だけがクリアに活動している状態で、息をすることさえ忘れています。正直、この世界に1分入れる人はまれだと思います。普通は数秒ではないでしょうか。私の場合もだんだんと長くなってきてはいますが、数分というのはまだありません。


 ただ、生命エネルギーは一瞬にして注ぎ込まれますので、実際は数秒間の数回の繰り返しで充分にエネルギーが充電されますので、それでも十二分に十分だと言えます。


 ここでようやく自分の正体が、身体でも、心でもない、「魂(気の集合体)」なのだと理解することができます。このことを理解していた合気道開祖植芝盛平先生は、「合気道は、霊主体従の武道である」と大本教の言葉を借りて説明されたのだと思います。



【参考】
「肉体は自己そのものではなく、自己の命が所有しているものである。それは、ちょうど着ている服が自分の肉体ではないのと同じである」

「我の本質を自覚するための第一過程は、「自己」と「自己の肉体」の関係と、「自己」と「自己の心」の関係を正しく認識することである」
中村天風先生の言葉



「合気道と悟り(姿勢、丹田、瞑想、空の世界)④」につづく
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2020年4月19日日曜日

合気道と悟り(姿勢、丹田、瞑想、空の世界)②

  さて、十年ぐらい前のことでしょうか?
 

 読んだ本のなかで、武道・格闘技会では著名な編集長が書いたコラムがありましたが、その中に昔の武道家が座禅を組んだ理由として「養生のため」というものがありました。


 その時点では、私の中では…何か腑に落ちない? という印象を持ちました。


 そのときの私の考えでは、合気道でいうところの「澄み切りの境地」や「明鏡止水の境地」を目指すのに有効であるがためだけに座禅を組むのだと思って(一部勘違い?)いたからです。


 この疑問から、私も正式に学んでみようと機会をみつけては教えていただきながら必死に座りました。


 しかし、座禅(結跏趺坐)をやるには足が短すぎるのか?(笑) 姿勢に狂いが生じたようで腰・背中に違和感が生じてきました。


 「座り方が足りないのだ!」という指導の下、私も「きっとそのとおりだろう」と感じて努力してはみたのですが…、努力の甲斐なく腰や背中の不調に悩まされ続けました。一番困ったのは実は胃の痛み‥。どうも意を圧迫し続けたようで胃酸過多になってしまったようです。 


 その後、合気道関係者のMさんに学んだ立禅を中心に続けてきましたが、腰や背中、そして胃の不調が改善され気持ちよく立つことができました。効果も倍増している気がします。


 やはり、無理する姿勢はよくない‥、無理な姿勢では自然体になれない、そう思います。


 結局のところ、禅や瞑想には、重心の安定が不可欠です。重心が一転に集中しないとリラックスすることが叶わず、自然体に至れないからです。


 なお、重心が一点に集中する場所が、いわゆる丹田です。この自覚が重要です。


 それはさておき、先ほどの腑に落ちなかった座禅を組む理由について、私の場合も現在はエネルギー充電? のためでしょうね(笑) 結局のところ同じでした。


 なお、曹洞宗開祖の道元禅氏師は、難行苦行を伴った座禅、また座禅により精神統一を高めようとしたり、無念無想を目指そうとする座禅を否定しています。それらは、結果的に得られるものであり、五感により巡り来る一念一念にとらわれず、跡をとどめない、こだわりを離れ、ただ座禅することにより、「安楽に遊戯することである」と説かれています。結局のところ、これでよいのでしょう(笑) 参考までに…。


 それでは、なぜこんなことを続けているのか?  続けられるのか?


 それは「気持ちが良くてたまらなくなるから」です。止められないのも原因の一つです。‥やめられません。それは一番幸福な時間だと感じるので心身が求めるのです。



【参考】
 「瞑想をすると夜の睡眠ではとれない精神的な疲労が癒されるので、私は瞑想をやらずにおれない」
 道元禅師の研究で有名な東京大学玉城康四郎教授の言葉



 ‥ということから、現在の禅の感想は? というと結果的に「養生のため」(笑)になっていますので、編集長の意見も当たっているような気がする今日この頃です。


 年齢が五十に近づいていることが主な原因だと思いますが、仕事のストレス、深夜勤務、飲み会等のおつきあいが引き続くと気力が減退し、「やる気がなくなり、後ろ向きな性格」になりかける…ことがあります。


 …が、立禅を“正確に行う”と「一つひとつの細胞が充電」している感じがして、「矢でも鉄砲でも何でもこい、やってやろうじゃねーか!」と、なぜかべらんめぇ口調(笑)になることも…。


 私個人の感想としては、体感、そして経験から「間違いなく充電している」と感じていますし、実際に考え方も前向きになります。


 そして大事なのは、続けただけ「真の幸福感に包まれること」が多くなることです。


 「あぁ満足‥、これ以上何もいらない‥」、そんな心境になります。


 ホントに「人生は心一つの置き所」(中村天風)…。 不思議なものです。


 禅を始めた若い時分には、まったく効果を感じませんでした。これは、禅を組み始めた当初は持って生まれた先天の気が充実しており、少しの充電では効果を感じることができなかったのだと思います。


 現在の状況は、禅を組んでから数分で体がポカポカしてきて気持ちが良くなり、止めたくなくなります。日により感じ方に多少の違いはありますが、「気持ちよくてたまらない」という表現が適当ではないでしょうか。


 また、時間がないときは、この状態のまま現実世界に引き戻されることになりますが、終了後は、握力が「ギュギュギュー」と入る感じになり、「気合が入る」という本当の意味は、このようなことを言うのかな? とも思ったりします。


 実際に握力計の針も通常以上に上がります。握力の限界からもう一握りできるような感じです。2速目のギヤに入った感じとも表現できます。



【参考】
  「空の世界には、驚くべき甦りの力が、あふれるほど、湛えられている」
 中村天風先生の言葉



 結局のところ、これは正しい姿勢と時間に比例するように思えます。


 以前の立禅の時間は、時間がないときは30分ぐらい、あるときで1時間ぐらいでしょうか。


 30分ぐらいでは、やり足りない感じが大で、残念な思いで終了していました。


 時間のあるときは、なぜか45分ぐらいから身体と空気の境目がなくなり始め、モヤモヤしたものが下から上がってきて、自然に脳が何も考えられない状態になっていました。


 その時の感覚としては、気持ちの良さだけが維持されます。


 はっきりと意識はあるのですが、時間の感覚が狂うのか…、気がつくと1時間程度経過しているときもありました。


 現在の私の考えでは、「何も考えない」という禅の教えは「姿勢の正しさ」と「リラックス」と「時間」に比例して結果的に生じるもので、「何も考えないという努力の結果ではなく」、「何も考えられなくなる」が正しい気がしています。


 そして、細胞の振動数の減少の度合いに比例して「細胞が充電する」のではないかと考えています。


 結局のところ、充電しているかのバロメーターは、「気持ちのよさ」だと思っています。


 ‥ここまではよくある話。


 ある程度の修行を積んだ方は全て理解できる内容だと思います。


 次は、瞑想、そして空の世界について書いてみます。



「合気道と悟り(姿勢、丹田、瞑想、空の世界)③」につづく
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2020年4月18日土曜日

合気道と悟り(姿勢、丹田、瞑想、空の世界)①

 合気道の魅力の一つに開祖植芝盛平先生の様々な逸話と共に伝えられる精神的境地の高さがあります。いわゆる開祖に悟った人物がいるという魅力。 


ただ肉体的に強いだけでは物足りない、精神的境地の高さも求めたい方々にとっては、とてもありがたい武道ですね。やはり、道と名の付くものの最終目標は見性悟道です。


 そこで今回は、合気道家の目指すべき方向性について書いてみます。


 その方向性とは、武道としての「合気道の理」についてで、内容は、「姿勢」と「丹田」、そして「瞑想」、その延長線上にある「空の世界」についてです。


 さて、私は、合気道が上達したいがために、様々な稽古を重ねてきましたが、ある時、合気道で特に重要なのは「姿勢」だと気づきました。その後、この姿勢を極めようとしていくうちに「丹田」に行き着き、その丹田を重視した姿勢の維持を心がけていたところ、それが結果的に瞑想の極意ということだったのか、結果的に空の世界に入ることが出来るようになりましたが、このことについて、私の体験も含めて書いてみたいと思います。


 随分前に、「構え」と題し、参考までに「姿勢」についての稽古法を書いたことがありましたが、この稽古法を一言でいうと、姿勢をきちんと整えて、「この姿勢を一生崩さない」稽古なのですが、この稽古でどのような効果が生じるのかを書いてみたいと思います。


 あくまで私の経験上でお話しますが、体質的に変化し、新陳代謝がよくなるようで異常な汗っかきになります。


 立ち読みしている時にも体が熱くなって汗が噴き出すようになり、また、自然にいつの間にか体が揺れていて笑われることもありました。


 また、丹田の意味がよく理解できるようになり、運動がお腹中心(人によっては腰中心)になります。


 さらには、20代の頃のほんの一時期でしたが、お腹、特に下っ腹がカチカチになり、わざと水月を殴ってもらっても全く平気な時期がありました。これは何だったのでしょうか?


  今でも不思議に多いますが、この期間は、元気が旺盛すぎてたいへんだった時期だった記憶があります。参考までに‥。


 それはさておき、食欲旺盛になり、かつ酒が強くなります。そして、とっても余計な効果なのですが、お腹が多少でてきます…。


 すると結果的に剣道で言うところの「へそが上を向く」状態が生じ、はっきりと丹田を自覚することが出来ました。


 結局のところ丹田とは、上半身の重みが物理的に一点に集まる場所なのだと理解することが出来ます。このことから、上半身の力みがとれないうちは、丹田の自覚は生じませんので、丹田の自覚を得るには、ひたすら上半身をリラックスさせ、力みが全くない状態で立つ、若しくは座ることで理解することが出来ます。


 合気道で力を抜く理由の一つが丹田の自覚を得るためだと思います。


 次に、ここのところを通り過ぎると、突然、「腰が強くなった」や「体が重くなった」と言われだします。体重が増えたのも原因かもしれませんが…(笑) そうしているうちに、「練習相手が突然軽くなった」気がして、合気道における呼吸投げが急に上達します。また、勝手に人が倒れたりする状況が生じ不思議な思いがします。


 ようやくここで重心が整い心身が統一している状況が人間の能力が一番発揮できる状況なのだと理解できます。全ては、重心が整い、動きが伴っても崩れが生じないことによる効果です。


 「構え」の稽古として最上のものは、姿勢をきちんと整えて、「この姿勢を一生崩さない」稽古だと思います。内容は簡単ですが、実行するには、これほど難しい稽古はないと思います。良い癖として身につければ言うことなしですね。もちろん、私も現在進行形で修行中です。


 姿勢を最重要視していた肥田式強健術の創始者である肥田春充氏は、「姿勢さえ正しければ一事が万事の如く、人間が本来有する一切の偉大な能力が自然と発生する」との言葉を残しています。実際に、1日1分程度の姿勢強化運動で、過去誰にも成し得なかった試し割りを実現しています。姿勢というものは、思っている以上に重要なのでしょう。


 なお、肥田式強健術では、正しい姿勢の状態のことを「腰腹同量」という言葉で表現しています。丹田が理解できる方は、ピンときて「なるほど」と思える表現ですが、この腰腹同量の力とは、呼吸をすると腹・腰・横腹が同時に膨らむ体勢のことです。姿勢をつくるのではなく、上半身の力を抜くと丹田に力が集中し、自然とそうなります。


 また、中村天風先生は、このことを「クンバハカ密法」や単に「クンバハカの姿勢(聖なる体勢)」と呼んでいます。


 ちなみにクンバハカのやり方は、


  ①まず肛門を閉める、
  ②同時に肩の力を抜き、肩を下げ、
  ➂へその下三寸(丹田)あたりに力を充実させる。
 

 …なのですが、これでは理解しにくい。


 このため、中村天風先生がインドのカリアッパ師から学んだ口伝(ヒント)を紹介します。


 「クンバハカとは、水をいっぱい入れたボトルに圧力が均等にかかる状態にからだをもっていくことだ…」


 表現は違えど、腰腹同量の力と同じことを言っているのだと思います。


 「姿勢の理」、そして「構えの理」というものがあるとすれば、この「腰腹同量の姿勢」、若しくは「クンバハカの姿勢」、これをベースにそれぞれの身体に応じて工夫すべきだと考えます。


 なお、経験則としてお伝えしますが、この肥田式強健術で詳細に説明してある姿勢はまねしないほうが無難です。それは、独学では腰骨・内臓等に問題が生じる場合があることと、人それぞれ骨格が違うため、目的が自然体への回帰なのに、逆に不自然な方向に行ってしまう可能性があるからです。肥田式の姿勢に何となく違和感、そして不自然さを感じるのは私だけではないでしょう?

<参考>
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%82%A5%E7%94%B0%E6%98%A5%E5%85%85




「合気道と悟り(姿勢、丹田、瞑想、空の世界)②」につづく
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2019年8月25日日曜日

武道哲学の実践

 先日、武道の大先輩であり、剣道七段のHさんが訪ねてこられました。


 訪問の意図は、「ブログの文章を使用させてほしい‥」という内容で、なんでも今年度卒業する方々に送る文書(手紙?)に使用したいとのことでした。


 どのブログの文章か確認したところ、以前、当道場を卒業し、九州大学へ進学したK君のために書いたものでした。


 もちろん快諾! 


 「ぜひ、ご活用ください」とお伝えしました。


 正直、嬉しいです。


 当会の合気道は、道場で稽古するだけのものではありません。


 道場で武道の原理原則を学び、社会で実践する‥、実践と言っても実際に闘い争うのではなく、武の道そのものを生活上で実践し、社会に貢献していくことが目標です。


 私は合気道の先輩方より、「武道は社会に活かしてこそ意味がある」、「人を倒すことにどれだけの意味があるのか」等々、血気盛んな時期に哲学的な教えを受けてきました。


 私は武道というものは、道場で人を投げたり、叩いたりすることだけに意味があるとは思っていません。社会に出た時に生き抜くためのツールでもあってほしいと願っています。


 こういった意味では、道場に通わなくても、武道哲学を一通り学び社会で実践することで、一人前の武道家となることも可能だと考えています。 


 下記がその文章です。よろしければご一読ください。



※合気道元徳会ブログ「合気の舞」より
【卒業おめでとう!】
https://gentokukai.blogspot.com/2016/03/blog-post_31.html



 久しぶりに清々しい気分を味わうことが出来ました。


 Hさん、ありがとうございました。



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2019年7月28日日曜日

金八先生と合気道

 俳優の武田鉄也さんが合気道を学ばれていることは、以前から噂で耳にしていましたが、始めた原因が鬱に苦しんだことだったとは知りませんでした。


 65歳から始められて現在は二段とのこと、本人の努力もさることながら、きっと合気道の魅力や哲学に魅せられたからなのだと思います。


 合気道は、真に生きる糧になりえるものだと思います。



【インタビューからの抜粋】
 61歳の時に心臓に欠陥が見つかって、ちょっと大きい手術で人工弁を入れたんです。その頃はモチベーションというか、やる気がどんどん下がっていってね。ウツっぽくなって、気持ちが常に落ち込むようになってしまったんですよ。


 若い頃は夜中に目が覚めてもすぐ寝られたんですけど、年を取るとそこから眠れなくなるんですよね。その時に暗いことばっかり考えるんです。それで精神的にもだいぶ弱ってきて、何かしないとまずいなぁと思いましてね。


 実際に道場の門を叩いたのは2014年7月です。でも50代の頃から合気道には興味があった。フランス哲学者で合気道の達人でもある内田樹さんが好きでよく本を読んでいたんですけど、合気道についてのくだりになると途端に訳が分かんなくなる。この人は一体何が言いたいんだろう、どうしてこんな考え方ができるんだろうとずっと謎に思っていたんです。


 そこで鬱ウツとした気持ちも吹き飛ばしたいし、「よし、道場へ行ってみるか」という気になりましてね。実際に道場へ足を踏み入れると、みるみる引き込まれた。ハッと気が付いたら5年も経っていました…。

 
【参考】


 …とのこと。


 きっと楽しいんだと思います。よく分かります。

 私も様々な失敗を体験したことで心と身体に不調をきたし合気道を学び始めました。


 私の周囲にも、そのような方がたくさんいます。


 合気道の呼吸法で生命エネルギーを十分に取りこめば、心が満たされて同時に幸福感を味わえる…。この繰り返しで、薄紙をはいでいくペースですが、確実に少しずつ「心が青空」になっていくことが実感できるものです。


 私もそうでしたし、周囲の者もそう感じているようです。


 人生の壁にぶち当たり、また、様々な事情から心身に不調をきたしている方がいらっしゃれば、ぜひ、合気道を学んでみてください。


 きっと何某かのよい影響を受けることができると思いますよ。



【リンク】
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2019年5月1日水曜日

平成から令和へ

 平成から令和の時代へ。

 平成に引き続き、令和も宮崎合気道会グループをよろしくお願いいたします。 

On May 1st, we have a new emperor.


At the same time, the Era name changes from heisei to Reiwa.




【リンク】
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2019年3月30日土曜日

Out of the World 武道は世界を駆けめぐる(岡本洋子師範著)

 世界的な合気道家である合気道京都代表の岡本洋子師範の書籍「Out of the World 武道は世界を駆けめぐる」が発売されました。





 岡本先生とは特に面識はありませんでしたが、数年前の全日本合気道演武大会でたまたま席が近くになったことがありました。その時に「小説の剣客商売の佐々木美冬さんが現実にいたら、きっとこんな風貌では…」と思い、また、「外国人が想像で心に描くサムライ的な女性(笑)の第一人者」という感じでとても印象深く、その後、動画等で先生の活動を興味深く拝見させていただいていました。


 細身でスラっとした体形で手足が長く、しかもシュッとしたスタイルのため演武が映える師範です。私のような日本ネイティブな柴犬体形とは全く異なります。うらやましい…(笑)


 さて、それはさておき岡本先生は、曹洞宗のお寺の生まれで、22歳での春に合気道に出会い、合気会本部で修業されてきたそうです。また、ご主人が大学で教鞭をとられる方で、やはり合気道家のクリスさん、そして二人の子供(長男、次男)を伴って、米国のオレゴン州のポートランドに移住、子育てしながら合気道を続けられたそうです。凄い!! 本人の努力ももちろんですが、きっと合気道に理解のある家族なのでしょうね。


 ちなみに、移住先のポートランドで自分が稽古を続けたいがためにポートランド合気会を設立。その後、帰国する2003年まで道場長を務められたそうです。


 その後、フランスのパリでクリスチャン・ティシェ師範に師事。日本に帰国後、京都の西陣に合気道京都を設立し、現在に至るそうです。なお、(公財)合気会七段です。







 第4章では、合気道との出合いの地である合気道本部道場での稽古づけの日々と、現在の拠点である合気道京都(西陣道場)の成立過程や活動を紹介するとともに、「稽古法」と「指導法」についての特別インタビューが収録されています。


 そして巻末には用語解説と技の連続写真を掲載されており、合気道家だけでなく合気道を知らない方にも読んでいただけるようになっています。


 特に印象に残ったのが武道に対する思い、 

 「私たちは、伝統の中で培われてきた武道という『より完成された人間になるための、生きる道』を世界に向けて発信し続けている。

 バレエで頂点を目指す日本の若者達がローゼンヌやパリのオペラ座を夢見てきたように、世界の合気道家たちは「AIKIDO」の祖国、日本を目指し夢を見る。日常の暴力が絶えない国で育った若者が、平和の武道、合気道に出会い「いつか自分の国をそうするんだ」という誓いのもとに地球の裏側からやってくる 。

 そんな彼らの熱い思いを、私たち日本の武道家はしっかりと受け止めなければいけない。日本古来の伝統という価値観念の上に胡坐をかいているだけでは「BUDO」は世界に根付いてはいかない。日常生活の中に実践的な武道の精神を取り入れ夜会に貢献し実践することに21世紀の武道家は真剣に向かい合うべきだと思う。

 杓底一残水、汲流千億人

 柄杓の底に残された一滴の水でも、清流に返してやればやがて多くの人の喉を潤す。一人一人がひとりが毎日の稽古に徹し、自分自身の中に平和を築いていけば世界中の人々が平和になる。気の遠くなるような希望だが、それが開祖植芝盛平船先生の合気への思いであったのではないか、と私は思う。」



 同感です。
 私もその一助となれるよう努めます。



 以下は書籍の内容です。
 よろしければご一読を…。





【Out of the World 武道は世界を駆けめぐる】

 「木版を叩く音が道場内に響きわたり、稽古が始まる。


 地球上のどこにいてもまったく同じ気持ちになる瞬間である。正面に礼をすると、阿吽の呼吸で木綿の稽古着と袴が擦れ合い、道場生たちが揃って礼をする所作で空気が振動する。
「お願いします!」

 さあ、今日もいい稽古をしよう! 」(本文より)


 本書は、世界で活躍する合気道家、岡本洋子がその活動をとおし、文化とは何か、武道とは何かを見つめなおした初の著作である。



第1章 トーゴ ヒエトロ
 遠く離れた日本の武道を日々稽古する少年たちに出会ったトーゴ--ヒエトロ


第2章 アメリカ ポートランド
 家族で移住し、初めて道場を開くことになったアメリカ--ポートランド


第3章 フランス パリ
 師と出会い、仲間を得た武道大国フランス--パリ


第4章 日本 東京・京都
 多くの国と地域で、文字通りじかにそこに住む人に触れ、関係をつないだ経験を振り返りながら、各国の人々が日本文化や武道に何を求め、それぞれの現実の中で、どのように武道を社会に還元しようとしているのか、その固有性、類似性を探り、武道を通した人間探求の道を描く。
 

 「先生、僕たちはなんで合気道をするんですか?」
 トーゴの小さな村で合気道をする少年の問いに、はたして著者はなんと答えたのか?
 本書を通し、著者の強さと美しさに通底する合気道と人への思いが明らかになるとともに、私たちはそこにさらなる進化と深化を見ることだろう!


著者について

岡本洋子(おかもと・ようこ)

1978年、公益財団法人合気会、合気道本部道場に入会、合気道の稽古を始める。79年渡仏。サークル・ティシエにて稽古を続け、81年に帰国。その後8年間本部道場で稽古を重ねる。

1989年渡米、オレゴン州ポートランドにポートランド合気会を設立し、2003年の帰国まで道場長をつとめる。

同年、合気道京都を設立。現在は京都を中心に、海外での講習会なども指導しながら、一稽古人として合気道探求中。合気道七段。




 【リンク】
◇宮崎合気道会グループ「合気道元徳会」HP
https://sites.google.com/site/gentokukai/

◇合気道元徳会ブログ「合気の舞」
http://gentokukai.blogspot.jp/

◇合気道元徳会道場長コラム「サムライハート」
http://aikido-gentokukai.blogspot.jp/


◇YouTube「Aikido Gentokukai」チャンネル
https://www.youtube.com/channel/UCs_Khixbq0eEYtQcD27Vdnw