合気道の魅力の一つに開祖植芝盛平先生の様々な逸話と共に伝えられる精神的境地の高さがあります。いわゆる開祖に悟った人物がいるという魅力。
ただ肉体的に強いだけでは物足りない、精神的境地の高さも求めたい方々にとっては、とてもありがたい武道ですね。やはり、道と名の付くものの最終目標は見性悟道です。
そこで今回は、合気道家の目指すべき方向性について書いてみます。
その方向性とは、武道としての「合気道の理」についてで、内容は、「姿勢」と「丹田」、そして「瞑想」、その延長線上にある「空の世界」についてです。
さて、私は、合気道が上達したいがために、様々な稽古を重ねてきましたが、ある時、合気道で特に重要なのは「姿勢」だと気づきました。その後、この姿勢を極めようとしていくうちに「丹田」に行き着き、その丹田を重視した姿勢の維持を心がけていたところ、それが結果的に瞑想の極意ということだったのか、結果的に空の世界に入ることが出来るようになりましたが、このことについて、私の体験も含めて書いてみたいと思います。
随分前に、「構え」と題し、参考までに「姿勢」についての稽古法を書いたことがありましたが、この稽古法を一言でいうと、姿勢をきちんと整えて、「この姿勢を一生崩さない」稽古なのですが、この稽古でどのような効果が生じるのかを書いてみたいと思います。
あくまで私の経験上でお話しますが、体質的に変化し、新陳代謝がよくなるようで異常な汗っかきになります。
立ち読みしている時にも体が熱くなって汗が噴き出すようになり、また、自然にいつの間にか体が揺れていて笑われることもありました。
また、丹田の意味がよく理解できるようになり、運動がお腹中心(人によっては腰中心)になります。
さらには、20代の頃のほんの一時期でしたが、お腹、特に下っ腹がカチカチになり、わざと水月を殴ってもらっても全く平気な時期がありました。これは何だったのでしょうか?
今でも不思議に多いますが、この期間は、元気が旺盛すぎてたいへんだった時期だった記憶があります。参考までに‥。
それはさておき、食欲旺盛になり、かつ酒が強くなります。そして、とっても余計な効果なのですが、お腹が多少でてきます…。
すると結果的に剣道で言うところの「へそが上を向く」状態が生じ、はっきりと丹田を自覚することが出来ました。
結局のところ丹田とは、上半身の重みが物理的に一点に集まる場所なのだと理解することが出来ます。このことから、上半身の力みがとれないうちは、丹田の自覚は生じませんので、丹田の自覚を得るには、ひたすら上半身をリラックスさせ、力みが全くない状態で立つ、若しくは座ることで理解することが出来ます。
合気道で力を抜く理由の一つが丹田の自覚を得るためだと思います。
次に、ここのところを通り過ぎると、突然、「腰が強くなった」や「体が重くなった」と言われだします。体重が増えたのも原因かもしれませんが…(笑) そうしているうちに、「練習相手が突然軽くなった」気がして、合気道における呼吸投げが急に上達します。また、勝手に人が倒れたりする状況が生じ不思議な思いがします。
ようやくここで重心が整い心身が統一している状況が人間の能力が一番発揮できる状況なのだと理解できます。全ては、重心が整い、動きが伴っても崩れが生じないことによる効果です。
「構え」の稽古として最上のものは、姿勢をきちんと整えて、「この姿勢を一生崩さない」稽古だと思います。内容は簡単ですが、実行するには、これほど難しい稽古はないと思います。良い癖として身につければ言うことなしですね。もちろん、私も現在進行形で修行中です。
姿勢を最重要視していた肥田式強健術の創始者である肥田春充氏は、「姿勢さえ正しければ一事が万事の如く、人間が本来有する一切の偉大な能力が自然と発生する」との言葉を残しています。実際に、1日1分程度の姿勢強化運動で、過去誰にも成し得なかった試し割りを実現しています。姿勢というものは、思っている以上に重要なのでしょう。
なお、肥田式強健術では、正しい姿勢の状態のことを「腰腹同量」という言葉で表現しています。丹田が理解できる方は、ピンときて「なるほど」と思える表現ですが、この腰腹同量の力とは、呼吸をすると腹・腰・横腹が同時に膨らむ体勢のことです。姿勢をつくるのではなく、上半身の力を抜くと丹田に力が集中し、自然とそうなります。
また、中村天風先生は、このことを「クンバハカ密法」や単に「クンバハカの姿勢(聖なる体勢)」と呼んでいます。
ちなみにクンバハカのやり方は、
①まず肛門を閉める、
②同時に肩の力を抜き、肩を下げ、
➂へその下三寸(丹田)あたりに力を充実させる。
…なのですが、これでは理解しにくい。
このため、中村天風先生がインドのカリアッパ師から学んだ口伝(ヒント)を紹介します。
「クンバハカとは、水をいっぱい入れたボトルに圧力が均等にかかる状態にからだをもっていくことだ…」
表現は違えど、腰腹同量の力と同じことを言っているのだと思います。
「姿勢の理」、そして「構えの理」というものがあるとすれば、この「腰腹同量の姿勢」、若しくは「クンバハカの姿勢」、これをベースにそれぞれの身体に応じて工夫すべきだと考えます。
なお、経験則としてお伝えしますが、この肥田式強健術で詳細に説明してある姿勢はまねしないほうが無難です。それは、独学では腰骨・内臓等に問題が生じる場合があることと、人それぞれ骨格が違うため、目的が自然体への回帰なのに、逆に不自然な方向に行ってしまう可能性があるからです。肥田式の姿勢に何となく違和感、そして不自然さを感じるのは私だけではないでしょう?
<参考>
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%82%A5%E7%94%B0%E6%98%A5%E5%85%85
「合気道と悟り(姿勢、丹田、瞑想、空の世界)②」につづく
https://aikido-gentokukai.blogspot.com/2020/04/blog-post.html
【リンク】
◇宮崎合気道会グループ「合気道元徳会」
https://sites.google.com/site/gentokukai/
◇合気道元徳会ブログ「合気の舞」
http://gentokukai.blogspot.jp/
◇合気道元徳会道場長コラム「サムライハート」
http://aikido-gentokukai.blogspot.jp/
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