それはさておき、前述した般若心経は、形ある物や目の前に現れる様々な現象は全て『原因結果の法則(因・縁)』に基づいて生ずるもので、原因があるから結果が現れているだけであり、それらは「一切が『空』(本質的に言うと本来それらには実態はありませんよ)」ということを伝えたかったのでしょう。
このため、この世は「無常」です。
つまり、この世に変化しない状態・物はなく、全ては、原因により化合されて変化することになります。物事は流転していくのが当たり前であり、かつ真理なのです。
そして、その「空」というものの見方が、この世の正しい世界観であり、この「空」を理解することで、まじりっけの無い「ありのままの本来の世界の姿」を理解することができます。
これが無差別智に至った人のものの見方です。
この「空」に至る道が仏教の八正道を修めることであり、逆説的に言えばいったん「空」に至れば八正道を修めたことにもなります。
山はどこから登っても、頂上にたどり着くのは間違いないようです。ただ、大まかな方向性だけは示さないと山の麓でうろちょろしているだけで、登ることさえできない‥。
‥ということから、お釈迦様は仏教哲学として、それを伝えたのでしょう。
そして、中村天風氏は、そこに至る道を分かりやすく伝えようとしました。
それが天風哲学の本質です。
次回からは、本来の流れに戻り、中村天風先生の生涯や具体的な天風哲学について紹介いたします。
‥つづく
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