“空間的な崩し”とは、さまざまなパターンが考えられますが、紙面の関係上、一例に絞って説明したいと思います。
これは、私が 「キックミットの理」 と呼んでいるものなのですが、例えばDさんが、Eさんの練習のためにキックミットを持って蹴りを受けていたとします。
Dさんが「この場所に蹴れ!」と叱咤(ポイント)します。
Eさんは、その位置に思いっきり蹴りを放ちます。
しかしDさんは、Eさんが蹴るときの「け(る)」のタイミングでキックミットの位置をわずか15センチほど移動させたとします。
Eさんは、蹴るの「け」の字のタイミングで目標地点が移動したためうまく蹴ることができません。
またまた、妙な例えで恐縮なのですが、弓でも吹き矢でもよいのですが、的を狙っていて、“いまだ!”の「い(まだ)」の字のタイミングで的がずらされたとしたら…、きっと身体機能にパニックをおこし力が発揮できなくなることでしょう。
つまり、相手から狙われている部分を未然に察知し、殴るの「な(ぐる)」の字のタイミングで、狙われた部分を移動させるのです。
また、この瞬間に相手が物理的に崩れる位置に移動するとさらに効果を発揮します。
本当の体捌きとは、このような技術のことを言うのではないかと思います。
宮本武蔵は、五輪書に攻撃の「こ(うげき)」のタイミングを押さえて何もさせないことを「枕を押さえる」と表現しています。
ちなみに先ほどの例は、枕を押さえずに崩しに応用した一例となります。
この技術には、「空気が読める」ということが必須条件で、しかも、相手が自分のどこを狙っているのか把握できる知覚レーダーが過敏すぎるくらい発達している必要があります。
何か文章にすると小難しく聞こえますが、剣道などの打突系の武道をされた方には当たり前の技術で、いつの間にか自然に覚えていたテクニックの一つだと思います。
また、私は、仕事の交渉術として使っています。
例えば交渉中に、相手が「お断り」など言いにくい事案をどのタイミングで切り出そうかとモゾモゾしているのを察知し、「さて、言うぞ!」の“さて”ぐらいのタイミングで、「あーそういえば…」と話を他の話題に切り替えてしまうのです(笑)。
きっと、社会人の皆さんは心当たりがあるのではないでしょうか?
でも、やりすぎると嫌われてしまいますね。
また、飲み会の席などで、「グラスが空になりそうだけど自分で注ぐのも…」という意識を感じて、ボトルを差し出すのも同じ道理です。
しかし、実際の打ち合いで使用するのはなかなか骨が折れることです。
このような技術は、相手とのレベルに歴然とした差異がある場合、若しくはその技術がハイレベルな場合でしか効力を生じません。
そして、最大の欠点は、心が動揺した時点で効力が生じなくなってしまうことです。
つまり、このような技術の欠点は、自分より上手の相手には一切通用しないということ!
やはり「生兵法は怪我のもと」のようです。
ご注意を‥。
‥つづく
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