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2017年1月16日月曜日

合気道と天風哲学15

<誓いの誦句>
 「今日一日、怒らず、恐れず、悲しまず、
 正直、親切、愉快に、
 力と勇気と信念とを持って、
 自己の人生に対する責務を果たし、
 常に平和と愛とを失わざる立派な人間として生きることを厳かに誓います」


 上記の言葉の全てが大事なポイントなのですが、今回は、「自己の人生に対する責務を果たし‥」の部分にスポットを当てて書きたいと思います。


 「自己の人生に対する責務」、一言でいうと『天命』です。


 それでは天命とは?


 「天命(てんめい)とは、天から与えられた命令のことで、天から人間に与えられた一生をかけてやり遂げなければならない命令のこと。 また、人がこの世に生を授けられ原因となった天からの命令のこと」。


 つまり天命とは、「天(神)から与えられた使命」であり、具体的には、人が生まれ落ちると同時に人生上で全うしなければならない仕事を与えられる‥ということ。


 それでは、その使命をどう判断・理解すればいいのか?


 「天の命ずる之を性と謂う」(中庸)


 現代語に訳せば「宇宙の主宰者、天地万物の創造の神が賦与したものを性(天性や性能、つまり才能のこと)と言い、この元来の本性に従うのを道と言う」というような感じでしょうか。


 つまり、「天命を与えられた瞬間に、その天命を全うするための『天賦の才(才能)』も同時に与えられているのですよ」と言っているように思われます。


 一般的に言えば、「自身の得意分野を全うすることが天命」と言うこと、‥なのですが、あえて苦手なものを克服することが天命でもあったりしますので、その判断はなかなか困難ですね。


 でも、40年ぐらい生きていればなんとなく感じるものがあるようです。
 私もちょうど40歳の時に「天命を自覚」しました。


 それまでの生きてきた過程、そこには成功も失敗も多々ありましたが、そのことが今に全てつながったと感じた瞬間、「ピーン」と走馬灯のようにそれまでの人生が脳裏をよぎり、自らの天命を自覚することができました。


 それは、それまで経験した良いことも悪いことも私の天命を全うするために必須事項だったのだと直感でき、悪い経験(だと思っていたこと)が全て良い経験へと変化(融和)した瞬間でした。


 変な人(笑)だと誤解を招きそうなので、あまりこういう表現は使いたくないのですが、まさに「天の大愛」を感じた瞬間でもありました。


 今では悪い経験なんて一つもなかったと思っています。


‥つづく


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2017年1月9日月曜日

合気道と天風哲学14

 今回から天風会の「日常心得」について書こうと思っていたのですが、その前に「誦句」というものを紹介した方が分かりやすそうだと考えましたので、変更して代表的な誦句を紹介します。


 誦句とは、天風先生がヒマラヤの麓で学んだヨガをもとに編み出したもので、言わば真言(マントラ)を現代風に誦句と表現したのではないかと思います。


 なお、小林弘明師範が初めて宮崎で講習会を行った時の二次会の席で、師範と私が一緒になって何か変な言葉を唱えていた(笑)のを、覚えていらっしゃる方もいるかと思います。


 その時に唱えていたのが代表的な誦句である「誓いの誦句」です。
 ‥実は真面目な話もしていたのですよ。


<誓いの誦句>
 「今日一日、怒らず、恐れず、悲しまず、
 正直、親切、愉快に、
 力と勇気と信念とを持って、
 自己の人生に対する責務を果たし、
 常に平和と愛とを失わざる立派な人間として生きることを厳かに誓います」


 社会生活上において、「また、やっちゃったな‥(汗)」と後悔することが多々あるかと思います(人にもよります(笑))が、この誦句の生き方を実践できていればきっと後悔することが少なくなると思いますよ。


 つまり、これが一番の正しい生き方!


 私は、早朝の起床時に1回だけ唱えるように心掛けています。


 意識がハッキリしていないウツラウツラ状態の時に「暗示として叩き込むのがコツ」です。


 すると不思議なことに、自然にこのような生き方をしてしまいます。


 ‥忘れては実践し、実践しては忘れ…を繰り返して早や十数年…。
 後悔するような事態が発生したときは、この誦句を忘れている時ですね。


‥つづく


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2016年12月26日月曜日

合気道と天風哲学13

 さて、中村天風氏とは?


 中村天風(なかむら てんぷう 1876年~1968年)氏は日本の思想家、実業家、元諜報員。日本初のヨガ行者で、天風会を創始し心身統一法を広めた。本名は中村三郎(なかむらさぶろう)。


 詳細は、下記をご覧ください。

<参考>
http://blogs.yahoo.co.jp/tanimansamuraispirit/35535851.html


 一般的には、「思想家、哲人、導師」というカテゴリーに入る方だと思いますが、この天風氏に師事していたのは、東郷平八郎、ロックフェラー三世、宇野千代、稲森和夫、双葉山等々の錚々たる顔ぶれで、合気道界では、二代目道主である植芝吉祥丸先生を始め、多田宏師範や佐々木将人師範系列、藤平光一先生の気の研究会系列とこちらも合気道界を代表される方ばかりですね。


 それでは、中村天風氏が創始した「心身統一法」とは?


 心身統一法とは、天風哲学と呼ばれる宇宙観、生命観、人生観を基に『命の持つ力を最大限発揮するための理論と実践論』です。


 具体的には、『人間の命は、心と体が一つになって支えており、心の態度を積極的にし、体の状態を健全に保つことで、健康で幸福な人生を堂々と歩むことができるための方法論』を述べたものです。


 そして、「絶対積極の境地」を体得する具体的な方法論。


 この絶対積極は、よく単なるプラス思考と同レベルで紹介されがちです。


 初心のうちは、そのような理解でもよいと思いますが、本質は異なります。より高尚なものです。


 具体的には下記のとおり‥。


 絶対積極とは、その人の思考や心が「怒り、恐れ、悲しみ」といった感情に支配されることなく、“常に”「明るく、元気、勇気のある状態・境地」の事で、天風氏は、「心がその対象なり相手というものに、決してとらわれていない状態、これを絶対的な気持ちという。何ものにもとらわれていない、心に雑念とか妄念とか、感情的ないろいろの恐れとか、そういったものが一切ない状態。決して張りあおうとか、対抗しようとか、打ち負かそうとか、負けまいといったような、そういう気持ちでない、“もう一段高いところにある気持ち、境地”、これが絶対的な積極である」と述べています。


 前述した「無差別智の境地」を別表現で述べたものです。


 結局のところ、「絶対積極」、「無差別智」、「明鏡止水」、「無念無想」、直心影流の「直心」などの境地は、同じ境地の別表現と言えると思います。


 そして、「神業」や「極意」と言われる技‥、例えば一刀流の「夢想剣」、新陰流の「水月」、「真の水月」、「神妙剣」、タイ捨流の「金剛王寶剣」、合気道の「魂の比礼振り」などは、この境地の延長線上にある技だと信じています。


 私は、この心境を保つために合気道をやっていると言っても過言ではありません。
 合気道が競技を行わない理由もそこにあるのだと思います。


 さて、長くなりましたが、この心身統一法は、詳細に述べたらきりがありませんので、次回からは、天風会の「日常心得」というものがありますので、このことを中心に書いてみたいと思います。


‥つづく


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2016年12月19日月曜日

合気道と天風哲学12

 それはさておき、前述した般若心経は、形ある物や目の前に現れる様々な現象は全て『原因結果の法則(因・縁)』に基づいて生ずるもので、原因があるから結果が現れているだけであり、それらは「一切が『空』(本質的に言うと本来それらには実態はありませんよ)」ということを伝えたかったのでしょう。


 このため、この世は「無常」です。


 つまり、この世に変化しない状態・物はなく、全ては、原因により化合されて変化することになります。物事は流転していくのが当たり前であり、かつ真理なのです。


 そして、その「空」というものの見方が、この世の正しい世界観であり、この「空」を理解することで、まじりっけの無い「ありのままの本来の世界の姿」を理解することができます。


 これが無差別智に至った人のものの見方です。


 この「空」に至る道が仏教の八正道を修めることであり、逆説的に言えばいったん「空」に至れば八正道を修めたことにもなります。


 山はどこから登っても、頂上にたどり着くのは間違いないようです。ただ、大まかな方向性だけは示さないと山の麓でうろちょろしているだけで、登ることさえできない‥。


 ‥ということから、お釈迦様は仏教哲学として、それを伝えたのでしょう。


 そして、中村天風氏は、そこに至る道を分かりやすく伝えようとしました。


 それが天風哲学の本質です。


 次回からは、本来の流れに戻り、中村天風先生の生涯や具体的な天風哲学について紹介いたします。


 ‥つづく


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2016年12月12日月曜日

合気道と天風哲学11

 前回、「良い種を蒔く(原因)から良い花が咲く(結果)のです。良い種を蒔き続けなさい。この地球上で生活するからには、この法則に則って生活する方が得(楽?)ですよ」ということをお伝えしました。


 この場合の「良い種・悪い種」や「良い花・悪い花」とは、あくまで個人的な主観で判断すべきものであり、全ての人に通じる共通の「良い・悪い」ということは、哲学的には定義できません。


 なお、「社会一般的な」とか「通常では」という程度の「良い・悪い」は定義できますが、これを基準とした社会ルールが「法(律)」というものの本質だと思われます。


 ただ、自身の天命が全うできるための原因となる種は「良い種」であり、自身の天命に逆行する原因となる種は「悪い種」ということは断言できそうです。


 こういった理由で、自身の天命というものをなんとなくでも掴んでおくことがより良い人生をおくる上で大事なことだと思います。


 そうでないと、どんな種を蒔いてよいかわからない‥。


 せめて、「どんな花を咲かせたい」というイメージだけは必要だと思います。


 このことから、昔の人は「立志」や「立志式」というものを重要視していたのでしょう。


 しかし、その時点での志や夢が本当にその人の天命と合致するかどうかは、なかなか分からない‥。推命する手法もあるにはあるのですが一般的ではない‥。


 このため、私は、「この世に生を受けたからには、まずは積極的に喜怒哀楽、艱難辛苦を可能な限り味わい尽くし、そして、この世の森羅万象を学び尽くして、自身の天命を自覚しなさい。


 そして、自身の天命が理解できたら、その天命が全うできるよう積極的に良い種を蒔き続けることが、この世界における正しい生き方」だと信じています。


…つづく


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2016年12月5日月曜日

合気道と天風哲学10

 このシリーズ、内容が難しいので、「読んでくれる方は、きっと少ないだろうなぁ」と思っていましたが、メールや問い合わせの数は何故か今までで一番です。精神的なものを求める方が多いのですね。「道」について興味をもってもらっていることについて嬉しく思います。


 さて、この実体のないことを仏教哲学では、「空」(クウ)と表現しています。
 般若心経の「色即是『空』、『空』即是色」の「空」です。


 そして、この般若心経では、「一切(は)空」、つまり「この世の森羅万象、本来、それらには全て実態は無いのですよ」と言い切っています。


 お釈迦様が、当時の方達が理解できるようにあくまで方便として、目に見えない物(実体のない物)を仮に「空」と表現し、目に見える物質やこの世の森羅万象を仮に「色」と表現したようです。


 その目に見えない「空」、言わば透明若しくは真っ白なイメージのものに「原因(因縁の因)」が加わり、化合物として「色(結果)」が生ずる。


 この世の中で起こる出来事は、「全て原因があって、その結果」が生じます。


 きっとお釈迦様は、「この世には、こういった宇宙の法則というべきものがあるのですよ」と伝えたかったのでしょうね。


 これを「因縁」とか「原因結果の法則」などと呼称しますが、目の前に起こる出来事は、全てこの因と縁によって生じる結果(化合物)ですので、「良い種を蒔く(原因)から良い花が咲く(結果)のです。良い種を蒔き続けなさい。この地球上で生活するからには、この法則に則って生活する方が得(楽?)ですよ」というのが、お釈迦様が後世の人に伝えたかったメッセージではないでしょうか。


‥つづく


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2016年11月28日月曜日

合気道と天風哲学9

 本来は善・悪などに実体はありません。なお、これは哲学的意味ですので念のため…。
 また、この点を勘違いすると某宗教のような誤った教義が生まれますので注意が必要です。


 ‥続けますが、培ってきた価値観が様々な現象を「善・悪」等に振り分けることが様々な面で悪因となります。


 物事に善や悪を当てはめて考えることは、本来は必要がないのです。


 もちろん、ありのままの事実をそのまま真っ直ぐに見ることは必要で、そのありのままの事実に対して培ってきた人生哲学で対応・対処していかなければなりません。


 事実に対し、余計な思想や感情を入れないで、過剰反応せずに、やり過ぎず、かつ足りなくもなく、本当の意味の適当に対処することが必要だということを言いたいのであって、物事を二面に分けて(差別)判断せずに、事実をありのままに見ることが大事だということです。


 参考までに無差別智に至っていたタイ捨流の流祖は、このことを伝書に次のように書き残しています。


 「『善悪、邪正及び迷悟などは全て一つに帰す』。まさにこの理は剣の道理であり、これを流儀の本源と成す‥」 タイ捨流極意書より


 私の継承するタイ捨流剣法の流祖もこの境地に辿り着かれており、このことの重要性を後世の者に伝えようとされたようです。ありがたいものですね。

 
 さて、話は変わりますが、ここにいったん至ると、「初めて読んだ難解な哲学書の意味が分かったり」、「お経を聞いているだけで内容がピン!と理解できたり」、「様々な宗教の教義の意味が直感的に理解できたり」、「禅の公案の意味が理解できたり」します。


 禅の世界に「十牛図」なる意味不明(笑)な図がありますが、それを無差別智に至った後に見ると「なるほど!」と見た瞬間に理解できるようになります。


 ‥不思議なものです。


 ここで大事なポイントをもう一度復習!


 ●差別智とは、善・悪など、物事を二つに分別(差別)し、理解する知恵のこと。

 ○無差別智とは、差別智を超越し、物事を分けて(無差別)考えない智慧のこと。


 ‥であり、無差別智に至れば、自我のサングラス(フィルター)をかけて物事を見ることがなくなりますので、物事がありのままに見えるようになります。このことを『覚醒』と表現する場合もあります。


 また、武道では、このことを単に「自然体」と呼んでいますが、これでは本来の意味が分かりにくいので、現代では「超自然体」(笑)、若しくは「真の自然体」と表現した方が良さそうです。


 しかし、いったんこの境地に至っても、悟後の修業が中途半端であれば、再び自我のサングラスをかけることになりますので注意が必要ですね。


 最後にやはり無差別智に至っていたと考えられる示現流の流祖東郷重位が師より教わった道歌を紹介します。


 「稽古とて ほかに求むる道もなし 心の塵をはらうばかりぞ」 示現流道歌


 きっと無差別智に至るだけでなく、悟後の修業の大事さを後世の方に伝えたかったのでしょう。


 ‥つづく


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